税理士塩見健二著
当座の枠張りは、アンコミ、当座貸越(英語:bank overdrafts)といろんな言い方があります。
アンコミとは、アンコミットメントラインの略です。
当座貸越は、日本語です。
ここでは、以下アンコミという言い方で統一します。
アンコミは、金融機関が会社の財務内容などを勘案して3,000万円、5,000万円と一定の極度枠を作ります。
アンコミは、金融機関に決算書が提出された段階で与信審査をあらかじめしておきます。
その後に債務者がお金を必要とするときに、金融機関は、軽い審査で融資審査だけをして融資実行になります。
極度枠の使い方としては、季節要因で売上が一時的に下がって手許資金が薄くなるタイミングでワンタッチというような使い方です。
ですので経常的でベタッと融資が寝るような使い方に馴染まないといえます。
銀行の当座貸越は、一定以上の財務内容や担保といった信用が必要です。
この信用が銀行の基準を満たさない会社であっても信用保証協会の保証に枠を設定できます。
いわゆる根保証というサービスです。
当座貸越は常にお金が必要でない会社で利用します。
産業でいいますと、売上の増減に季節性がある商売です。
銀行員は、短期の運転資金融資のことをタンコロと呼称したりします。
例えば、ウェディング事業ですと3月~5月は売上が伸びますが、8月がまったくダメです。
8月に売上がないために現金は、急激に減少します。
この一瞬だけの手許資金を増やしたい目的で当座貸越を利用します。
建築業者は建築現場ごと、不動産業者は、商品不動産の仕入ごとに融資を組みます。
銀行員は、プロジェクト資金と呼称します。
プロジェクトごとに融資をします。
あまりにも建築現場が多い場合や商品不動産が多い場合は、当座の極度枠を設定してその範囲で運転資金として融資します。
長期の融資は、利息の支払いが固定費となります。
なるべく、短期の要資事情が出現したときにだけ資金調達をしようと考える会社もあります。
このような意味で利払いを圧縮して利益を残したい会社が利用します。
そもそも会社に多額の手許資金がある会社にあるパターンです。
この手の会社が当座貸越で融資を利用するのは、金融機関との付き合いに限ります。
よくあるのは、金融機関の中間決算(9月)と本決算(3月)のタイミングで短期融資をうけるパターンです。
更改は、民法513条に規定されています。
この民法513条とは、既存の債権の要素を変更する契約を締結することにより、当該債権が消滅すると同時に、これに代わる新しい債権が成立すること。とされています。
要するに、金融機関の融資するという義務は、更改によって融資額が増減するということです。
アンコミの更改は、決算などのタイミングでアンコミの極度枠を増減させます。
業績がよければ問題ないですが、赤字になったりBSが重たくなったり、純資産が薄くなると極度枠を減額される恐れがあります。
当座貸越の審査は、厳しいです。
下記が目線となります。
①純資産価額が大きい
②直近の決算書が黒字
③5年以上の業歴
④不動産等の担保を差し入れている
⑤定期預金等で預金担保を設定している
アンコミは、融資の極度枠をはるだけであって融資を絶対にするという約束を金融機関と締結していないです。
ということは、資金繰りにアンコミの枠を当てにしているとベタ貸しという痛い目にあうことが考えられます。
逆に、絶対に極度枠の範囲で融資するという金融手法もあります。
これはコミットメントラインというものです。
あとアンコミは、月々の約定弁済がなないため借金漬けになりやすいです。
借金の返済に追われている会社の場合は、本来の使い方を逸脱して枠目一杯借りています。
計画的な利用が求められます。
最後に、資金使途を厳格にする金融機関の場合は、アンコミでの融資を割賦付に切り替えて欲しい、一旦完済して欲しいといってきます。
その理由は、過剰債務の会社でアンコミの枠をはっている会社だと必ずといっていいほど極度枠までパンパンに借りられているからです。
当座貸越契約へ貼る印紙は、200円となっています。
国税庁のホームページでは、極度貸付契約証書で紹介されています。
資金繰り等の財務、税務、会計をオールインワンで解決!
MBO/LBOスキームを実行する場合の実務上の目線について説明します。
今回は、親族や知人に株式が分散し、それを事業会社に買わせる手法を前提に説明します。
まず、最初にすべきことは株価算定と金融債権者へのスキームのご説明になります。
親族や知人が株式を販売してくれなかったら話が進まないです。
金融債権者の支援スタンスを聞いておかないと面倒なことになります。
ですので、株価を算定して、いくらぐらいで売ってくれそうという目線をつけます。
重要なのは、株価算定の基準日を決めておくことです。
決算日が多いです。
次に金融機関への株の買取資金の融資打診をしていきます。
以外ですが、日本政策金融公庫や商工中金といった政府系金融機関の職員の方は手馴れています。
民間金融機関は、やったことがないという職員がおおいです。
融資審査は2か月位で終わります。
ポイントは、LBO資金に3ヵ月位の元本据置期間をつけておくことです。
SPCは、売上がないため返済能力はないからです。
利息の支払いや株の決済の送金手数料をSPCの口座にいれておいた方がいいです。
審査の途中で株の買い上げるSPCを組成します。
SPCの組成と通帳作成で、おおよそ1ヵ月みておけば大丈夫です。
いざ、株の決済が終わりました。
次は、SPCと事業会社の合併です。
合併は、債権者保護手続きが1月必要になります。
債権者保護手続きは、官報への公告と金融債権者への個別催告になります。
債権者からの異議申し立てがなければ、合併登記になります。
だいたい、キックオフから合併まで6ヵ月位でおわります。
MBO/LBOスキームは、SPCと事業会社を合併させることによって株の買取資金を事業会社に返済させることになります。
そこで懸念されることは2つあります。
事業会社の借金弁済額が増大することにより資金繰りが悪化します。
そして、株の買取資金は、自己株式の取得と似た効果になりますので純資産価額が悪化します。
この純資産価額が債務超過になるようでしたら金融機関からの支援はないと思った方がいいです。
金融機関は、債務超過=返済に問題がある先と一義的にみてしまうものです。
なれていない会計事務所にありがちなミスがあります。
SPCは、基本的に債務超過になる可能性があります。
買収資金にかかる利子で赤字になるからです。
このとき赤字の会社を買収しているため、その他資本剰余金が▲になっていることがあります。
資本剰余金は▲になっていたら利益剰余金を振り返えして資本剰余金を0にする必要があります。
この記事は、2364文字です。
リファイナンスとは、当初に約定した貸出条件を見直しや借り換えをすることをいいます。
不動産業者の商品不動産の仕入資金の場合は、返済期間の延長が多いです。
商品不動産に関するプロジェクトが事業計画通りに、加工、販売できずに在庫不動産が売却できず、融資が返済できなかったことをいいます。
このような理由で完済できないときにリファイナンスを考える必要があります。
リファイナンスの手法は、下記のとおりです。
1つ目は、当初貸出をした銀行、ノンバンクがリファイナンスに応じる場合
2つ目は、当初貸出をした銀行、ノンバンクがリファイナンスに応じず返済をせまる場合
3つ目は、債務者が支配する別の会社に不動産の所有権を移して、そちらでリファイナンスする場合
銀行、ノンバンクがリファイナンスに応じるか、応じないかは、下記のマトリックスチャートが目線となります。
銀行は、基本的にリファイナンスをあきらめた方がいいといえます。
信用金庫は、ケースバイケースです。
信用組合は、何度かのリファイナンスだと応じてくれます。
日本政策金融公庫は、そもそも長期目的の不動産取得にしか融資しないです。
ノンバンクは、リファイナンスOKです。
1つ目は、当初貸出をした銀行でリファイナンスに応じる場合です。
銀行は、当初の事業計画通りに不動産を売り切れなかった場合ですと、ほぼリファイナンスに応じないです。
ただ、下記のような場合は、リファイナンスに応じます。
1つ目は、すでに不動産の売却先と売買契約を締結しており販売の決済時期までに不動産が販売できなかった場合です。
2つ目は、リフォームに関する部品の調達が遅れているため販売活動がまともにできなかった場合です。
要するに、販売しきれなかったことに正当な理由がある場合です。
このときのリファイナンスに関する融資条件は、金利が0.5%UP、返済期間を6ヵ月延長といった内容になっていきます。
2つ目は、銀行間の肩代わり(※信用金庫や信用組合も含む)です。
これは銀行から銀行への肩代わりです。
当初のプロジェクト通りに事が進んでいないプロジェクトであったとしても、肩代わりしてもいいという銀行も存在します。
立退きが必要なプロジェクトは、往々にして立退料の合意でプロジェクトが進まない場合が多いです。
肩代わりする銀行は、この事業者の財務内容なら回収できる、どうしても融資残高を伸ばしたい等の理由があれば肩代わり資金の資金調達が可能になります。
金融機関の融資の世界は、支店長次第で大きく融資スタンスが変わります。
ですので、数あたっていい支店を見つけるのがいいです。
この肩代わりの注意点は3つあります。
1つ目は、当初融資した銀行の融資事務手数料です。回収する銀行の融資事務手数料は返金されないです。
2つ目は、肩代わりしますと不動産の抵当権の抹消、設定に関する登録免許税が課されます。
3つ目は、リファイナンスも考えると金利が安かったとしても銀行から不動産の仕入れ資金を借りないことです。
信用金庫、信用組合は、商品不動産がリファイナンスになるときに約定通りに弁済をせまることが少ないです。
ただ、リファイナンスが3回、4回と続くようでしたら話がかわってきます。
特に注意しないといけないのは、リファイナンスが何度も続くような場合だと出入り禁止になる場合があります。
要するに、信用金庫や信用組合から、不動産の仕入れの目利きができていない、エンドユーザーにとって買いたいと思うリフォームができていない、と思われるからです。
あとは、ノンバンク等に融資を肩代わりしてもらったあとも、不動産の登記簿謄本をあげていつに販売できたのかチェックされます。
金融の世界のリファイナンスは、基本的に金利が高い方へのリファイナンスがないです。
リファイナンスの候補は、金利の高い金融サービス業者となります。
ノンバンクは、融資の本質に関係なく不動産という担保があって自社の融資の保全が図れているならば融資をするというスタンスです。
ただ、注意しないといけないのはノンバンクは、コーポレートのクレジットを銀行のようにみないです。
ですので、リファイナンスをする不動産の仕入価額と融資額が大幅に乖離する可能性が多いにあります。
特に区分マンションは土地評価が全く伸びないです。
そのため自己資金の負担が銀行融資よりも重くなる傾向にあります。
銀行や信用金庫、信用組合からノンバンクにリファイナンスするときは、持ち出しが発生するということです。
ノンバンクの融資条件は、銀行、信用金庫、信用組合より悪いです。
一例は下記のとおりです。
融資事務手数料が1.5%前後
金利が3.5%~15%
繰上弁済事務手数料1.5%前後
ノンバンクであっても、あまりにもリファイナンスをするようでしたら他社への借り換えを提案されます。
このときの借り換えの提案先は、ノンバンク間で業務提携を締結している先になります。
このときの特徴は、どんどんと金利の高いノンバンクへの借り換えとなっていく点です。
最終的には、金利15%のノンバンクとなってしまいます。
それと同時に追加担保も求められます。
よくあるのが、代表者や代表者親族の自宅への2番抵当権の設定です。
業務提携ノンバンク間の借り換えですと転抵当権が利用できる可能性があります。
転抵当権というのは、抵当権を抹消して、再度設定するのでなく抵当権をノンバンク間で譲渡するという手法になります。
ですので、抵当権設定に伴う登録免許税が課されずに済みます。
資金繰り等の財務、税務、会計をオールインワンで解決!
信用保証協会の保証は、金融機関が無担保で実行する融資に債務者が約定通りに弁済してくれなくても、債務者に代わって代位弁済するサービスです。
ですので、金融機関からすれば債務者に貸出した資金がデフォルトしても安心して貸し出せるわけです。
このようなことから原則的には、財務内容がよくない会社、社歴が浅い会社というようなクレジットポイントの低い会社に利用されるサービスです。
ですが、実務をみていますと社歴も長い財務内容がいい会社であるにも関わらず融資内容は、オール保証付きという会社さんも見受けられます。
信用保証協会付き融資は、原則として1社あたり無担保保証が8,000万円となっています。
ですが、株式関係や売上の関係をみて信用保証協会に企業グループだと判断された場合は、この1社あたり無担保保証8,000万円の枠の範囲で保証がなされるのでしょうか。
答えは否です。
その企業グループの関係の売上や財務内容をみながら保証枠を決定します。
この企業グループの判定は、一部の業種を除外することがないです。
ですので、不動産賃貸業、サービス業、ヒューマンリソース会社というグループもありえるということです。
あとは、同じ代表者の場合は、企業グループとみられます。
よくあるパターンは、親会社と子会社の代表取締役が一緒という場合です。
ですので金融機関に、どの会社とグループ関係にはいっているのか、そしていくらまで保証枠があるのかを確認した方がいいです。
当然に、最新の決算書の提出により保証枠はアップデートがなされます。
優良企業で業績がうなぎのぼりであったり、年商は大きいにも関わらず中小企業基本法に規定する中小企業に該当することから信用保証協会の保証サービスをうけらる会社が存在します。
このような会社への無担保枠での信用保証は、8,000万円が枠の範囲なのでしょうか。
答えは否です。
このような優良企業の場合は、無担保枠の他に有担保枠2億円もまた無担保枠として活用できます。
ですので、無担保枠2億8,000万円までの信用保証が活用できます。
上記で説明しました一般的な融資に関わる保証と社債に係る保証は別物ですし、部署も違います。
ですので、信用保証協会は、融資としていくら、社債としていくらの保証サービスがうけれるのかを確認しておいた方が無難です。
信用保証協会付き融資は、すべての融資が借り換え対象にならないです。
借り換えができない代表例は下記のとおりです。
1は、オーソドックスなパターンです。
設備投資が失敗して設備投資のお金が全く返せず手元資金が目減りしているときです。
このときは、借り換えという考え方でなく諸経費の支払いという資金使途の運転資金で現金を補給することになります。
2は、マニアックな話です。
市区町村の制度融資は、保証協会付き融資に借り換えできないということです。
これは市区町村の制度融資は、保証協会の保証の他に市区町村が再保証しています。
ですので、保証協会が保証責任を増やしたくないために借り換えができないものだと考えられます。
3は、よくあるパターンです。
いつでも完済できるほどの手元資金がない会社は、この問題に直面してリスケジュールに突入します。
資金移動無しでも借り換えができる商品もあります。
4は、保証協会の保証枠でセーフから一般等の異なる枠間での借り換えになります。
セーフティや危機関連は、一時的な事業の外部環境の影響で業績が悪化した企業向けのサービスです。
そもそも返済期間が長く設定されたような商品でもあります。
5は、信用保証協会の保証割合が増加することになります。
銀行は、信用リスク無しの貸し出しが増加することになります。
保証協会にとって不利になるため借り換えを認めていないだけです。
ただし、保証商品がOKといっているものは問題なく借り換えできます。
どんな保証を利用しているかは、信用保証書をみればわかります。
信用保証書は銀行が債務者に渡していない、渡し忘れている場合もあります。
借り換えのパターンは、多々あります。
・メリット
①金利や保証料といった資金調達コストが安くなる場合もある。
金利や保証料が安くなる代表例は、いわゆるコロナ融資です。
コロナ融資は、金利0%、保証料0円という融資条件でした。
②複数の融資口を一本化することによって約定弁済が小さくなることもある。
融資口が増えると返済金額が大きくなる傾向にあります。
これを一本の長い返済期間の融資に借り換えすることによって資金繰りが安定します。
・デメリット
①銀行の肩代わりの場合は、肩代わりされる方が出入禁止になる可能性もある。
日本政策金融公庫の融資は、銀行の保証協会付き融資よりも金融コストが安いです。
信用保証協会付き融資の内容は、金利+信用保証料になるからです。
そこで金融負担を圧縮するために、銀行融資の返済目的で借り換え資金を日本政策金融機関から資金調達したいと考えます。
ですが、日本政策金融公庫の融資は、融資申込書にも記載されていますが他行借り換えに利用できないです。
融資された資金が銀行融資の繰上弁済に充てられたかは、決算書にその事実が反映されることになるためバレます。
ただ、運転資金の融資は、理屈上ですと固定費等の支払いという資金循環で利用されるものです。
ですから、日本政策金融公庫からの融資実行後に相当の期間をあけて銀行融資の繰上弁済しても問題ないと考えられます。
会社の本店所在地が移転すると、銀行の担当支店と利用する信用保証協会が変わる場合があります。
例えば、千葉県に本社がある会社が東京都に本店移転をした場合です。
この場合ですと、銀行の支店は、千葉にある支店から東京にある支店に支店異動があります。
信用保証協会も千葉県信用保証協会から東京信用保証協会に変わります。
このときの信用保証協会の保証の基本的な考え方は下記のとおりです。
千葉県信用保証協会が保証している融資を、東京信用保証協会が保証する融資での借り換えはネガティブです。
ですので、本店所在地を異動した後の千葉県信用保証協会が保証した融資口は、返済を進めるしかないということになります。
新たに東京信用保証協会が保証する融資は、通常通りの保証審査になります。
税理士塩見健二著
店舗の撤退をしたときや赤字事業を売却したときに、その店舗や事業に紐ついているリース取引の取り扱いについて説明します。
リースとは、日本語に直すと、借りる、という意味です。
リースの種類は、会計基準で分類すると簡単に言いますと下記のとおりです。
オペレーティングリースは、物の借り手からすると返すことが前提のリース取引です。
ファイナンスリースは、物の借り手からすると保有+資金調達ということが前提のリース取引です。
店舗撤退や事業売却により不要となったリース物件は、リース会社からリース債務の一括弁済を求められます。
これは銀行からの融資で設備投資に紐ついた融資に係る店舗や事業が撤退したときに一括弁済を求められるのと同じです。
返済原資となる利益が見込めなくなったため一括弁済を求められるというのが理由です。
法人の年商規模や債務残高、過去に返済履歴によっては、リース審査が通らないことがあります。
もしかしたら、リース額を小さくした場合はリース審査が通る可能性があります。
こんなときに協調リースを検討していくことになります。
原則は、リース債務者にリース債務の一括弁済を求められます。
交渉次第で新たに店舗や赤字事業を購入された事業者にリース債務の名義変更ができます。
そのやり方は、新たにリース債務者となろうとする事業者がリース会社に審査を申込します。
その審査が通ったらリース債務の地位承継ができます。
リース債務者が入れ替わるときは、連帯保証人も加除できます
連帯保証人の加除とは、連帯保証人を加えたり、除いたりすることです。
リース取引の地位承継をする事業者が下記に該当する場合は、連帯保証人の追加だけになります。
①財務内容が悪かった場合
②地位承継に関して粉飾決算等が疑われる場合
旧リース債務者の連帯保証が残った状態で、新リース債務者がデフォルトを起こすと全ての連帯保証人に請求がいきます。
この場合は、連帯保証ですので、分別の利益がありません。
地位譲渡において旧債務者の連帯保証が外れない場合は、自己資金でリース債務を繰上弁済(中途解約)も一手です。
新債務者は、リースバック取引でリース債務を作って、その資金を旧債務者に渡しても大丈夫です。
新債務者は新たにリース取引の審査がはいるため決済日の1月前には申込をすませた方が無難といえます。
中古自動車のカーリースは、一旦自己資金で所有権をこちらに移転させてからリースバックすることがあります。
事前に、どのタイミングでリースが組めるのかをリース会社に確認しておいた方が資金難に陥らなくてすみます。
リース取引は、原則としてリース資産、リース債務としてオンバランスしないといけないです。
リース資産は、リース物件です。
リース債務は、リース料の総支払額です。
例外処理として、リース額300万円未満の場合は、リース料の支払い時にリース料として費用処理ができます。
そのためオンバランス処理が不要になります。
資金調達といった財務、税務、会計を一括受注!
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税理士塩見健二著
この記事は、3,894文字です。
バックファイナンスとは、下記のような金融手法です。
一旦、商材や設備の仕入れ資金を自己資金で決済します。
その後に金融機関からの融資で減少した自己資金を回復させます。
バックファイナンスの申込みから着金までの期間は下記の通りです。
金融機関の支店決済で済む融資量だと4週間ほど、本部決済になると5週間が目安です。
バックファイナンスは、本来の金融手法でないです。
初回取引からバックファイナンスを拒む金融機関も存在します。
金融機関の融資の世界は、支店長次第で大きく融資スタンスが変わります。
ですので、数あたっていい支店を見つけるのが常套手段です。
不動産業者向けのバックファイナンスは、ほとんどメガバンク、地方銀行で対応してくれないです。
「ほとんど」、であり「全て」でないです。
よほど財務内容がいい事業者や取引実績の長い事業者にはバックファイナンスも対応してくれるということになります。
銀行が財務内容の判断に使う資料は、下記のとおりです。
銀行以外の信用金庫、信用組合、ノンバンク、クラウドファンディングでも同じ資料を利用します。
①直近の試算表
②不動産の在庫一覧表※各プロジェクトの住所、簿価、ひも付き金融機関、進捗が記載されいること
③借入残高表
④販売実績一覧表
多くの不動産業者は、試算表と不動産在庫一覧表および借入残高表の数字が合致していないです。
銀行としては、数字が合致していない資料を提出されても困るものです。
各資料の数字が合致していない原因は、簡単です。
試算表は税理士が作成する、在庫一覧表や借入残高表は不動産業者が作成するからです。
解決策は、試算表以外の資料も税理士が作成したらいいだけの話です。
一部の外資系銀行は、不動産の担保力があり、事業者の財務内容がよければバックファイナンスでも融資をします。
信用金庫、信用組合ですと、バックファイナンスも融資審査の土台にのってきます。
特段、銀行のようにバックファイナンスは資金使途が明確でないという理由で融資審査を蹴ったりしないです。
一部の信用金庫は、初回からバックファイナンスだとハードルが高いため融資審査をしてくれない先もあります。
日本政策金融公庫は、不動産の仕入れ資金であってもバックファイナンスが可能です。
注意点は、不動産の仕入決済前に日本政策金融公庫にバックファイナンスをお願いしたい旨を伝える必要があります。
日本政策金融公庫によるバックファイナンスは、自己資金で仕入れ決済後に、抵当不動産に抵当権設定登記をします。
その抵当権設定が完了した後に、融資実行となります。
日本政策金融公庫は、日本全国の不動産を担保としてみます。
不動産の決済は、日本政策金融公庫の支店にて行う必要があります。
ですので、不動産仲介業者のオフィスなどで決済できないです。
地方の不動産の仕入れるときは、買主、売主双方が日本政策金融公庫まで足を運ば必要があります。
あと、融資条件が一般貸付だと不動産の仕入れ資金であっても、原則10年と短期間です。
ただし、売主が高齢で不動産賃貸業を引退するなどの事情があれば事業承継資金の利用(返済期間15年、20年)がありえます。
ノンバンクは、自社の貸金債権の保全が図れているならばバックファイナンスでも融資を検討します。
ただし、注意しないといけないのはノンバンクは、金融機関と異なりコーポレートの評価をしないです。
ですので、不動産の仕入価額と融資額が大幅に乖離する可能性も大いにあります。
特に区分マンションは土地評価が全く伸びないです。
そのため自己資金の負担が銀行よりも重くなる傾向にあります。
ただ、あまりにも財務内容がいい企業は、金融機関よりも融資量が伸びる傾向にあります。
財務内容がいい基準は経常的に税前利益1億円オーバーが目線になります。
融資条件は、銀行、信用金庫、信用組合より悪いです。
ノンバンクの融資条件の目線は下記のとおりです。
融資事務手数料:1.5%前後
金利:3.5%~15%
繰上弁済事務手数料:1.5%前後
クラウドファンディングはバックファイナンスが対応可能です。
クラウドファンディングは、ファンド組成業者が投資家に資金使途を説明する必要があります。
その資金使途を明確にできるようにしていくことが大切になります。
融資条件のイメージは、下記のとおりです。
資金使途:不動産の取得、諸経費の支払い※ファンド業者ごとに何処までの資金使途でファンドを組成するか異なります。
融資事務手数料:2%前後
金利:5%~
ロット:3,000万円~
着金までの期間:2ヵ月
融資期間:6ヵ月~12ヵ月※融資期間が長いと投資家から資金が集まりずらいです。
LTV:ほとんどのファンド業者は、不動産担保ローンになります。担保評価以上の融資はしないです。
バックファイナンスは資金使途で考えると運転資金です。
どの支出までカバーされるかは、担保物の評価にもよります。
担保物の評価が伸びればのびるほどカバーされる支出はのびていきます。
比較的に担保評価が伸びやすい不動産は、土地の広い不動産になります。
逆に不動産の担保評価が伸びない代表例は、下記のとおりです
・区分マンション
・土地の狭いビル
・エレベーターのない5階建ての建物
バックファイナンスは、自己資金を支払ってから2ヵ月までが範囲とする金融機関、ノンバンクが多いです。
バックファイナンスをする旨をあらかじめ金融機関、ノンバンクに伝えておくことが大切です。
不動産の仕入れの会計処理は、不動産を在庫で保有するのか、長期保有し家賃収益を得るのかでかわってきます。
まずは、不動産を在庫として保有する場合を説明します。
在庫として保有する場合は、基本的に売上が計上されるまで仕入れ代金、諸経費、金利、融資事務手数料、租税公課を在庫に計上します。
この処理をしないと下記の不利益をこうむります。
財務上の不利益は、費用が先行してしまうため決算書の数字が悪化します。
下記に銀行の決算評価が高くなるような会計処理の仕方を添付します。
次は、収益不動産として不動産を保有する場合の会計処理を説明します。
不動産の仕入れまでにかかった支払いは原則として、固定資産の勘定である土地と建物に按分して資産計上します。
ただし、登録免許税は支払い時に費用処理が認められています。
ですので、不動産の取得に要した、仲介手数料、司法書士報酬、融資事務手数料が固定資産として処理されます。
はじめに在庫であっても収益であっても税務調査で指摘される事項を説明します。
土地と建物の按分方法は、原則として、固定資産評価額に基づいて按分します。
土地と建物の按分に関する裁判例(大阪地裁、令和2年3月12日判決等)があります。
税務署および裁判所も原則として固定資産評価額に基づく按分を支持しています。
その他の方法は、不動産鑑定士による鑑定士評価、路線価と建物再調達原価に基づく按分があります。
税務署との無用なトラブルを避けるためには、売主および買主で価格形成のプロセスを明確にしておくことが重要だと思われます。
売主および買主の発言内容の議事録、メモ、不動産鑑定士による鑑定評価証、何パターンかの按分価額のシミュレーションになります。
上記においては、固定資産評価額に基づいて按分することで税務署とのトラブルが避けられることを説明しました。
耐用年数越えの建物の固定資産評価額は、新築評価額の5%とされています。
ですが、耐用年数を超えた建物を古家付きの場合は、建物0円評価で土地のみの対価とする売買契約もあります。
古家付き土地の裁決事例(平成20年5月8日、裁決事例集No75、711頁)は下記のとおりです。
①売買契約書には、建物価額0円、土地のみと記載。
②納税者が、契約書通りに会計処理せず、建物と土地を固定資産評価額で按分した。
建物簿価に基づいて減価償却した。
③税務署は、売買契約書通りに会計処理すべきであり、減価償却すべきでない。
④国税不服審判所は、税務署の主張を支持する。
税務調査時に、特に注意しないといけないのは、融資事務手数料です。
融資事務手数料は、銀行などに融資実行時や融資枠を設定したときに融資金額の数%を手数料として支払います。
商品不動産に関する税務署の基本的な考え方は、仕入れた不動産に係る費用は、売上が計上するまで費用してはいけないです。
融資事務手数料は、融資実行時等に支払うため売上に先行してお金を支出してしまいます。
安全策としては、不動産をプロジェクト毎に管理し適正な原価計算ができている体制にしておけば無用な税務リスクを負わないです。
こちらも基本的に不動産を在庫としてもつ場合と同じ点が税務調査でみられていきます。
あとは、収益不動産の特有な論点として不動産の耐用年数がチェックされます。
この耐用年数が早く償却されているように会計処理されていないかがみられます。
資金繰り等の財務、税務、会計業務をオールインワンで受注!
重要事項説明書がない場合の不動産取引に関するファイナンス上の注意点について説明します。
重要事項説明書とは、宅地建物取引業法によって、不動産の売買時に買主の保護の目的から作成される書類です。
その不動産に関する権利関係や高さ制限、日影規制等の法令上の制限、周辺環境について書かれた書類になります。
不動産の売買契約をする前に宅地建物取引士が、不動産の買主に説明する書類でもあります。
下記のような取引の場合は、重要事項説明がないです。
一つ目は、売主が素人で、買主がプロ(宅建業者)です。
二つ目は、売主が素人で、買主も素人の場合です。
不動産取引に当たって仲介業者が介在する場合は、上記取引でも重要事項説明があります。
金融機関は、重要事項説明を基本的に求めます。
金融機関が重要事項説明で重要とする箇所は、最後のページのその他留意事項です。
この留意事項に、その不動産にとってのネガティブな要因がたくさん書かれているからです。
重要事項がない場合は、金融機関によって融資審査ができないと断られる場合があります。
銀行は断る傾向にあります。
ですので、資金調達候補は、信用金庫、信用組合、ノンバンクとなります。
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