出店スケジュール
飲食店の出店は、まずはいくら資金を集めることができるかを知ることから始めます。
この資金の構成は、自己資金と融資に分解できます。
融資の目線は、自己資金の3倍になります。
開業準備前に金融機関へ融資相談することをオススメします。
0円解答の場合ですと、出店計画が絵に描いた餅になってしまいます。
自己資金と融資を含めたトータルの投資額で出店するエリア、賃借不動産の大きさ、内装が居抜き、スケルトン等の目線ができてきます。
ここまで来ましたら出店候補の選定になります。
投資目線
出店の投資額
出店立地の前提は、東京23区内の人気路線沿線ローカル駅、居抜き店舗、25坪(家賃は、坪1.5万円)、居抜き、1,000万円の投資にします。
この1,000万円の出店計画を、3つの投資区分に分解します。
・設備資金(店舗物件の物件取得)
物件取得は、敷金7ヶ月、礼金1ヶ月、仲介手数料1ヶ月、当月家賃1ヶ月、前払家賃1ヶ月、保証料1ヵ月の計12ヵ月分の家賃が目安となります。
今回のケースですと月家賃37.5万円(坪1.5万円×25坪)×12ヶ月のため計450万円となります。
余談ですが、サブリース契約(転貸借契約)の店舗ですと、賃貸借契約よりも家賃、敷金、保証料が全体的に大きくなる傾向にあります。
・設備資金(店舗の内装造作)
飲食店舗の内装造作は、居抜きとスケルトンで出店コストが大きくかわります。
25坪で、スケルトンの場合ですと厨房機器600万円、内装、ファザード500万円の計1100万円が目線になります。
居抜物件の内装代金は、250万円はみた方がいいです。
そこにめったに、でないような人気物件ですと中古内装は1000万円といったところもあります。
・運転資金(採用教育、広告、その他諸雑費)
運転資金は、什器100万円、クレカ決済売掛金見合50万円、採用教育60万、レジ30万円、広告50万円、メニュー開発20万円、ユニフォーム10万円で計300万円が目線になります。
飲食店は運転資金の融資審査が通らないとよくいわれます。
ですが、上記のような何にいくら使うかといった費目があれば審査の土台にのります。
投資回収の見方
投資回収の目線は、3年(※≒ROA33.3%)がセオリーです。
飲食業界は、流行りすたりが早いです。
想定の投資回収が5年だと、業態が廃れたときにも、まだ借金があることも考えられます。
借金付きの投資計画の場合は、投資回収が終わったときに、初めて自社の利益が積み増しとなります。
ですので、上記1,000万円のうち、物件取得はずっと借りたら使えるため投資回収から外して、内装250万円と運転資金300万円の計550万円が回収原資となります。
この550万円は、税金支払い後の手残りである税後キャッシュが投資回収原資です。
550万円を3年で回収になりますと、年間183万円の手残りが必要になります。
財務
財務状況の見方
飲食店業の財務状況でみておくべきポイントは3つなります。
①手許現金
手許現金は、月間3ヵ月分持っておけば余裕です。
きちんと運転資金の融資で手元資金を管理しておかないと手許現金は、月商0.5ヵ月分になります。
この月商0.5ヵ月分の手許資金量になると給与や仕入れの支払いが遅れてきます。
②純資産比率
純資産比率は、負債と純資産の比率です。
この純資産比率が10%を超えていないと金融機関からのプロパー融資が難しいです。
できれば、常に10%は欲しいところです。
この純資産比率がマイナスになると債務超過ということです。
債務超過は、借入金の返済が難しいという統計があるので金融機関からの金融支援が難しくなってきます。
③債務償還年数
金融機関は、この債務償還年数を重視します。
この資料は、借金が税後の手残り現金の何倍かという指標です。
手残り現金の10倍だと10年で完済するということです。
金融機関のプロパー融資の基準は、債務償還年数10年以内になっています。
この債務償還年数が10年を超えだすと新規融資が難しくなってきます。
損益のプライマリー原価
東京都内の損益のプライマリー原価は下記の通りです。
飲食店業のプライマリー原価は、食材費、人件費、家賃の3つで70%という目安があります。
この3つの費目が70%に収まったら営業利益率10%の店舗の出来上がりです。
コストの見直しは、このプライマリー原価をさわります。
小さい経費をさわっても営業利益に与えるインパクトが小さいからです。
地方にいきますと家賃比率が5%を下回ることもあるので、上記の損益モデルと異なってきます。
ボトルキープ
居酒屋の中には、ボトルキープを取り入れるところと、入れないところがあります。
ボトルキープのメリット、デメリットは下記のとおりです。
メリット
離れていったお客さんが戻ってくる
デメリット
売上が減少する
掛け取引
食材やお酒といった材料を仕入れは、店舗まで持ってきてくれるのでプレコフーズや西原商会等の卸業者から注文することがあります。
この仕入れ代金は、仕入れ月の翌月末日に支払いが多いです。
このように仕入れと決済にズレがあることを掛け取引といいます。
掛け取引をするには、卸業者に1月分の仕入れ代金を担保として差し入れることもあります。
行政への届出
保健所への届出
飲食店の出店に関する資格は、食品衛生責任者の選定が必須になります。
調理師免許は不要です。
食品衛生責任者は、各都道府県で開催されている講習会を受講すると資格が取得できます。
通常1日の講習になり、受講料は10,000円ほどになります。
注意しないといけないのは、講習会がすぐに満席になります。
早めに予約することをオススメします。
消防署への届出
飲食店の出店には、防火管理者を選定する必要があります。
防火管理者は、都道府県知事や消防長が行う防火管理講習を受講すると資格が取得できます。
届出書の提出期限は、工事着工の7日前となっています。
税務署への届出
この出店で事業を開始する場合は、税務署に開業届、青色承認申請書、給与支払い事務届、源泉所得税の納期の特例申請書を提出します。
この出店がはじめてでも、2店舗目以降であっても、都道府県と市区町村に開業届を提出することになります。
これは、各都道府県や市区町村に納税する均等割や償却資産税がかかわってくるからです。
損害保険への加入
飲食店業を営業するうえで、加入されてる保険は下記のとおりです。
①PL保険(製造物責任保険)
食中毒を起こしたときに、お客さん等に対する保険です。
②施設賠償責任保険
店舗内で転倒した等でお客さん等がケガをしたときの保険です。
②売上保障保険
休業時等の売上を補填する保険です。
④火災保険・地震保険
火災の他に高額な什器が壊れたときのための保険です。
資金調達
日本政策金融公庫による資金調達
個人的には、日本政策金融公庫の融資審査は、銀行融資で一番緩いと考えています。
スタートアップ(創業)時の融資の目線は、上述のとおり自己資金の3倍までが融資限度可能額とみてもらって大丈夫です。
ですので、自己資金300万円の場合の融資額は、300万円×3倍の900万円が限界です。
出店投資の限度額は、1,200万円(自己資金300万円+融資900万円)となってきます。
このとき自己資金が300万円未満ですと融資0円回答も十分にありえます。
ちなみに、複数店舗を出店するときの融資の審査基準は、どんなにいい計画を作っても融資が伸びないです。
融資審査の基本は、過去の決算状況、返済実績、財務内容で与信判断がなされます。
信用保証協会による資金調達
信用保証協会は、民間銀行の融資に信用保証協会の保証を付ける融資手法です。
感覚的には、日本政策金融公庫よりも融資審査は厳しいとおもいます。
保証協会付き融資で資金調達コストが安いのは制度融資になります。
オススメは、日本政策金融公庫も信用保証協会付き融資も両方とも申込しておくことです。
協調融資
協調融資とは、2以上の金融機関が同じ資金使途で融資することをいいます。
飲食店の場合ですと、この出店に係る融資みたいな感じです。
協調融資は、資金使途ごとに資金調達先をかえます。
設備資金は、日本政策金融公庫。
運転資金は、民間銀行の信用保証協会付き融資。
飲食店の出店に関する補助金
飲食店向けの補助金は、多いです。
補助金の種類としては、新規雇用に関する労務関係のものや、設備の買い替えが多いです。
設備の買い替えの品目は、省エネの冷蔵庫、食洗器の買い替え用資金を補助するといったものです。
補助金の申請は、書類を集めたり、申請用紙に記入することが多いです。
労務関係の補助金は、社会保険労務士が得意です。
設備等の補助金は、行政書士が得意です。
補助金は、申請から着金まで6ヵ月ほどかかります。
飲食店の成功、失敗事例
長期的に成功している飲食店
①創業30年を超える飲食業の特徴は、ずばり店舗不動産をもっていることです。
店舗不動産を持つことによって下記の効果があります。
東京都内ですと売上に対する家賃比率は10%に達しています。
自社利用の店舗不動産の取得に係る融資は、10年弁済前後です。
この返済が終わったら、その不動産は自分のものです。
いざとなったときには、自社の不動産を担保に資金調達できます。
②同じ沿線、同じ駅に出店している。
同じ沿線や同じ駅で出店することによって店舗視察の時間短縮や人のやりくりが機動的にできるからだと考えられます。
③出店場所は、駅近、広い道路に店舗が面している、角地、人通りが多いが必須になっています。
④競合がいない。駅から店舗までに同じ業態(唐揚げ屋等)があると、そちらにお客さんが捕られるようです。
飲食店の出店失敗事例
①20坪未満の物件は、席数がとれないことから宴会等の大きな売上がとれないです。
②2階建ての物件は、ホールスタッフの人件費が多くかかります。
③商業施設への出店は、内装工事をB工事からする可能性があり、設備投資が高額になります。
④不動産の契約が定期借家契約は、不動産の賃貸人が契約を更新しないといったときに退去する必要があります。
⑤坪単価が高い物件は、家賃は高額になると損益分岐点が上がってしまいます。
⑥豪華な内装設備投資は、設備投資額と売上が比例して伸びないので投資回収できるか不明です。
築古不動産を借りるとトラブルになりやすい
①築古店舗で定期借家契約である場合
これは大家さんが建物を取り壊す気でいる可能性が高いです。
契約の更新ができないとせっかく作り上げた店を手放すことになります。
②下水管の破裂
築50年を経過するような不動産は、目に見えない場所の老朽化が激しいです。
特に下水管が破裂した場合は、どこに配管があるか不明な場合だと床を広範囲ではがす必要がでてきます。
そうなりますと長い間、営業ができなくなります。
③立退き交渉
ボロボロの不動産は、不動産開発業者が隣地を買い占めて、建て壊して、大きな土地に仕上げて再開発をしようとします。
そうなりますと立退き交渉となります。
不動産業者と賃借人で賃借権の買取り価額が合意に達しなかったら裁判に発展します。
店舗賃借権の買取り相場は月家賃の100ヵ月といわれています。
裁判になっても賃借人が勝訴しますが、裁判沙汰は避けたいところです。
自己資金0円で開業する方法
自己資金0円で開業する方法は、店舗を持たないことにより可能となります。
具体的には、業務委託(受託)スキームになります。
現在、店長をしている店舗のオペレーションを業務受託という形で独立開業します。
業務委託スキームは、通常ですと業務委託者がその店舗で生まれる想定利益=店舗使用料とします。
ですので、開業者である業務受託者はあまり儲からないです。
儲けようとするならパートアルバイトの人件費を抑制するために開業者がシフトインするしかないです。
独立開業後に300万円以上の自己資金を貯金してから自分のお店を検討してもいいと思います。
業務委託契約と転貸借契約の違い
業務委託契約は、店舗のオペレーション業務を受託する契約です。
転貸借契約は、賃借不動産を又借りする契約です。
ここで重要となるのは、融資です。
業務委託契約の場合は、業務を受託しているだけですので融資審査で特段問題とならないです。
転貸借契約の場合は、賃貸借契約を金融機関から求められます。
通常の賃貸借契約は、転貸を認めない契約です。
こうなりますと、金融機関は、私法上での違反契約とみますので融資審査に落ちてしまいます。
設備投資に関する減価償却と税制の特例計算
設備の減価償却費は、冷蔵庫等の備品は、5年償却、給排水、電気設備等は、15年償却、内装、ファーザードも15年償却が目線となります。
ですので、出店してから短期撤退してしまうと減価償却が進んでいないことから大きな撤退損失が計上することになります。
税制の特例には、投資額の〇%の税額控除をする規定等が存在します。
税額控除の前提は、納税額があることです。
ですので、納税がないと税制上の優遇規定がうけれずに不利になってしまいます。
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