自己株式(金庫株)の取得といった資本政策と資本性ローンの活用方法を説明します。
自己株式を取得する局面
会社が自己株式を取得する局面は多種多様に考えられます。
一つ目は、財務レバレッジを利かせるといったROE対策です。一株当たりの稼ぐ力を高めることによって株価を押し上げるといった上場会社の株価対策です。
二つ目は、相続対策のやり直しです。同族会社においては、その会社を支配する人間を一人にした方がいいです。
特段、相続対策をせずに同族会社の株式が親族に散らばってしまうと少数の同族株主が増えてしまいます。
きちんと利益がでて配当がだせる局面だと問題ないと考えられますが、赤字が続くような局面ですと少数の同族株主が自身の財産を毀損させるなと騒いでくるものです。
ですので、このような少数株主(マイノリティ)の株式を会社が買い取るといった企業統治の側面で買い取る場合もあります。
三つ目は、親会社から独立する子会社の株式を子会社の代表者が買い上げるといったMBO、子会社の労働者が買い上げるといったLBOの局面において個人のポケットマネーには
限界があります。そこで会社に株式を買わせるといったM&Aの手法として自己株式の取得が考えられます。
四つ目は、創業当時の共同出資者が喧嘩別れをした等の理由で一緒に事業をしなくなった場合です。事業から離れる人の株式を会社が買い取るパターンです。
自己株式の取得による財務上の効果
財務上の効果としては3つあげられます。
一つ目は、会社が自己株式を取得することによって純資産が薄くなってしまいます。
純資産比率が少なくなってしまうということです。
二つ目は、上記の純資産比率に関係しているのですが金融機関からの融資審査が通りづらくなってしまいます。
金融機関は、返済が確実なところに対して低利で資金を融通するといったサービスをします。
その返済の確実な点を審査する尺度の一つが純資産比率です。
三つ目は、手許の現金預金が減少してしまいます。
手許資金が減少するということは資金繰りが悪化してしまいます。
最悪の場合は、納税、融資の返済、買掛業者、人件費の支払いが遅延してしまい会社自体の信用を毀損してしまいます。
資本性ローンの使い方
資本性ローンは、日本政策金融公庫が発売している金融商品です。
その大きな特徴は、借入ですけど金融機関の財務スコアリング上だと資本とみなしてくれる点です。
ですので、自己株式の取得によって薄くなった純資産額を資本性ローンで補充することによって増資したと同じ効果が期待できます。
その他の特徴としては、返済方法が事業計画に沿って返済期間をきめて期限一括で弁済するというものです。
利率は、通常のローンよりも資本性が強い(リスクが高い)ことから利益連動で決定されるといった特徴があります。