税理士塩見健二著
赤字決算を黒字にするには
決算月の変更
赤字決算を避けるためのポピュラーな手法です。
現時点で黒字だけど、決算まで閑散期に突入、恒常的な赤字がみえているときに決算期を変更して無理やり黒字にします。
保険解約益で黒字化
現時点では赤字だけど、過年度に節税目的で加入していた保険を解約したら多額の保険解約益がでる場合に検討する手法です。
会計基準の変更
よくあるのは、前払地代家賃や前払保険料といった「等質等量」のサービスを費用計上せずに前払費用という資産勘定で決算をする手法です。
注意点は、一度前払費用にした費用は、翌期以降も同じ会計処理をしないと税務調査時に利益調整として指摘されます。
資産計上化
単年で費用計上を認められているモノを資産計上することにより黒字化を目指します。
開業費の計上
創業ステージの会社は、イニシャルコストを売上で吸収することができないです。
そのため売上が計上されるまでの経費を開業費として資産計上をして、数年かけて償却する方法があります。
赤字部門の外注化
赤字部門を外注化することにより、赤字を他社に押し付けます。
赤字決算を避ける方法
決算月の2月前に決算着地予想を検討することに限ります。
2月前に決算着地予想をすることで、赤字決算を黒字決算にする手法を検討できます。
赤字決算の種類
一過性の赤字
一過性の赤字とは、臨時的、偶発的な事情での赤字をいいます。
この赤字の場合は、金融機関に説明すれば特段、融資審査に問題が生じないです。
具体例は、下記のとおりです。
新規事業をはじめたためにイニシャルコストが売上よりも先に発生した。
コロナ禍などの天変地異が発生したことにより、売上がたたなくなった。
代表者が退職し、多額の退職金を計上することになった。
設備投資について税法上の特例計算を用いて、その全額を単年で特別償却した。
恒常的な赤字
不採算部門の損切りができない、過剰人員を整理できない、などで根本的な解決策がない状態の赤字です。
この赤字の場合は、金融機関に解決策を説明しないと新発の融資が厳しいです。
赤字決算と融資
赤字決算でも審査が通りやすい金融機関
日本政策金融公庫は、赤字決算であったとしても融資審査が通りやすいです。
理由のつく赤字
上述したような一過性の赤字が該当します。
特段、融資審査には問題ないといえます。
2期連続赤字
金融機関と締結する金銭消費貸借契約書には、❝担保❞という条文があります。
ここには、『信用不安などが生じた場合に担保などを追加、変更する』とあり、これが追加担保条項になります。
さらに、❝期限の利益の喪失❞という条文があります。
ここには、『❝担保❞にかかる条文が履行できなかったときに融資金の全額弁済』とあり、これが繰上弁済条項になります。
3期連続以上の赤字
3期連続以上の赤字の場合は、信用保証協会付き融資も0円解答になるとおもってもらって差支えないです。
この状態になるとアセットファイナンスが検討になります。
アセットファイナンスは、不動産や有価証券などの担保物の評価額内での融資になります。
金融機関からの融資は、不動産を担保として差し入れ、かつ、ここにまだ信用保証協会の有担保保証を利用することになります。
わざと赤字決算にする場合
数年間融資をうける必要がない
コロナ融資などで多額の融資をうけた会社は、当分の間融資をうける必要がなくなります。
このような会社は、赤字をはきだす傾向にあります。
相続対策
相続対策の一つとして、中小企業の株を次の世代に渡す必要があります。
株価算定をするときは、黒字会社よりも赤字会社の方が株価を引き下げる傾向にあります。
赤字決算のメリット
法人税
赤字決算の前期に法人税の納税がある場合は、法人税の繰戻還付請求をできます。
これにより前期に納税した法人税の還付をうけることができます。
消費税
消費税は、預かった消費税▲支払った消費税が納税額となります。
赤字会社の場合は、支払った消費税が預かった消費税を上回ることがあり消費税の還付をうけることができます。
さらに、中間消費税を納税している会社は、この中間消費税の還付になることもあります。
赤字決算のデメリット
税務調査
消費税の還付申告は非常に税務調査に発展しやすいです。
税務調査になると、税理士への税務調査立ち会い報酬や修正申告書の作成手数料などがかかります。
通常の税務調査は、2日間になります。
税務調査に関する税理士報酬は、30万円~が相場になります。
儲かっていない税理士は、「税務調査の日数をもっと増やしてくれないか」と税務調査官と交渉します。
住宅ローンの審査
住宅ローンなどの審査にとって赤字決算は当然よくないです。
個人でワンルームマンションをもたれている方は、ワンルームマンションの減価償却費や支払利子で赤字をつくりだし給与所得と損益通算をしている方がいます。
これも赤字決算であることは間違いないため審査への影響はよくないといえます。
社宅の審査
法人の社宅の審査は、法人の利益で社宅賃料が支払いきれるのかを審査されます。
赤字決算の場合は、やはりマイナスの影響があるといえます。
資金繰り等の財務、税務、会計をオールインワンで解決!