税理士塩見健二著
融資サポートサービスは不要な理由
創業融資の場合は、原則として日本政策金融公庫と信用保証協会付き融資です。
これらの融資は、資料を提出し、自己資金、許認可等の一定基準の内容を満たせば基本的に融資が受けられるからです。
下記の記事を読んでもらえたら概要は理解できるとおもいます。
創業融資の借り方
申込から着金までスケジュール
脱サラ、のれん分けなどで新たに創業しようとされる経営者は多いです。
事業をする場合は、必ずといっていいほど融資が必要となってきます。
ですので、事業のコンセプトを考えるまでに一番に資金調達を検討する必要があります。
初回審査の場合は、申込から着金まで2ヵ月みておけば大丈夫です。
自己資金の目線
弊社も創業時に日本政策金融公庫から600万円の資金調達をして開業しました。
事業に使える自己資金は、300万円でした。
いろんな方の創業融資をみていますと、自己資金の3倍が創業融資の目線だなとおもいます。
業務経験
創業融資にあたって履歴書を提出します。
そこで今から行おうとしている事業内容と過去の経験を照らし合わせられます。
まったく業務経験がないことをする場合は、なぜですか?とヒアリングされます。
株主構成
ベストな形
株主構成の原則は、代表者1人で100%株式を保有していることが望ましいです。
融資がうけれない株主構成
①代表者と株主が異なる場合
②外国人、外国法人が50%超の株式を保有している場合
銀行の中には、25%超で取引できないところもあります。
取締役構成
創業融資で取締役の構成でプラス評価されるのは、士業や上場会社等の取締役が登記です。
ネガティブ評価されるのは、過去に脱税、刑事事件等でTV放送された人、金融ブラックの人、破産経験者が取締役登記をされている場合です。
財務内容
資本金
創業から融資を利用する場合の資本金額は、300万円をオススメします。
これは、上述のとおり300万円もっていないと融資0円の回答もありえます。
事業スタートから売上計上までのランニングコストを考えると、あまりにも少ない資本金だと決算時点で債務超過に陥っている可能性があります。
債務超過
債務超過の決算は、金融機関にとってネガティブな影響があります。
債務超過=事業破綻という統計があることから、わざわざ、そこに新規融資をする必要がないと考えられます。
許認可、業法上の免許
融資審査時には、許認可や業法上の免許の提出を求められます。
破産等の金融事故を起こしている人への融資
銀行融資を踏み倒したことがある場合
銀行融資を踏み倒した場合は、その銀行と取引できないです。
銀行融資を踏み倒しているということは、信用保証協会の求償権も踏み倒しているはずです。
信用保証協会も利用できないと考えてもらって大丈夫です。
よく東京の信用保証協会は踏み倒したが、違う管轄の信用保証協会は利用できると勘違いされている方が多いです。
信用保証協会はネットワークでデータがつながっています。
家賃、携帯電話の料金の未納履歴がある場合
完済している場合は、特段問題にならないです。
親族を代表者にする
夫が事業に失敗し、破産法等を適用して債務について法的整理をした方は、妻を代表者にして融資を受けようとする方がいます。
銀行の調査で、実態がめくれますのでやめておいた方がいいです。
法的整理をした人も利用できる創業融資
日本政策金融公庫
新規開業資金(再挑戦支援関連)は、一度、自己破産等で債務関係を綺麗にされている方も利用できる融資です。
民間金融機関
信用保証協会付き融資は、過去に飛ばしたことがあった場合でも民間保証が利用できる場合があります。
民間保証の代表格は、オリックス、オリコ、アサックス(※アサックスは、保証付不動産担保ローンになります。)です。
民間保証は、どの金融機関で取り扱っているか足で稼ぐ情報になってきます。
銀行の選び方
創業融資の銀行融資は、支店に電話したら担当者から支店に来て!と言われてお仕舞です。
できれば、個人で利用している通帳の銀行に電話した方がいいかもしれないです。
都市銀行
都市銀行での創業融資は、断られる可能性があります。
都市銀行の最小融資ロットは、3,000万円というイメージがあります。
創業から対応してもらえるかは、その支店判断となります。
地方銀行
地方銀行は、第一地方銀行、第二地方銀行、その他の銀行に分類されています。
金融庁のホームページでみられます。
わかりやすく分類しますと下記のとおりです。
第一地方銀行は、公金を扱う銀行です。
第二地方銀行は、地方にあるが第一地方銀行ではない銀行です。
その他の銀行は、支店の数が少ない銀行です。
プロパー融資は、不動産、有価証券、現預金といった担保や信用力のある会社、個人の信用がない場合だと決算3期分が必要になります。
第一地方銀行
創業融資から取引は可能です。
プロパー融資は、第二地方銀行よりも審査ハードルが厳しいイメージです。
第二地方銀行
創業融資から取引は可能です。
プロパー融資で、特段資金使途がない融資も対応してくれるイメージです。
その他の銀行
あおぞら銀行、オリックス銀行、SBJ銀行、ネット銀行等の銀行です。
信用金庫
創業融資から取引可能です。
プロパー融資は、資金使途が明確でないと厳しいです。
プロパー融資だとしても支店決裁の範囲ですので500万円位の小ロットになります。
プロパー債の金利水準は、2.500%~のイメージです。
融資実行時に出資を求められます。
信用組合
創業融資から取引可能です。
日売り商売で現金が店にある商売の方は、銀行員さんが集金しにきてくれたりと便利です。
支店の近くに事務所等がない場合は取引してもらえないです。
プロパー融資は、資金使途が明確でないと厳しいです。
プロパー融資だとしても支店決算の範囲ですので500万円くらいの小ロットになります。
プロパー債の金利水準は、3.000%~のイメージです。
融資実行時には、組合員になる必要があるため出資が必要です。
出資額は、信用組合によって異なりますが融資額の1%、10万円、1万円といった感じです。
韓国系の銀行、信用組合
韓国系の信用組合の特徴は、不動産か預金を担保に融資することが基本になります。
信用保証協会の保証を利用するときは、十分に返せる見込みがある債務者にしか利用しないです。
信用保証協会付き融資とは
民間金融機関の融資は、大きくわけてプロパー融資という無担保、無保証融資と信用保証協会付き融資に分類できます。
信用保証協会の保証サービスは、銀行の融資が焦げ付いたときでも元本の返済を保証するというものです。
信用保証協会付き融資は、どこの民間銀行で借りても似たような金利となります。
信用保証協会の保証商品
全国どこの信用保証協会でも似た保証商品になっています。
都道府県の保証商品
その地域の課題を解決するような保証商品になっています。
東京都ですと、DX化、事業承継といった保証商品が特徴的です。
市区町村の保証商品
いわゆる制度融資です。
その市区町村に1年以上本店がある等の要件を満たす必要があります。
利子補給がついている保証商品ですのでお得な商品です。
保証枠は1500万円ぐらいの小さな商品が多いです。
融資をする銀行と事業者が同じ市区町村である必要があります。
保証商品の切り替えタイミング
信用保証協会の保証は、その地域、時期に応じて必要な保証が提供されます。
保証ラインナップは、毎年3月と9月に入れ替わります。
信用保証協会付き融資の調達コスト
融資期間が24ヵ月を超える場合は、
信用保証料率/2+金利が資金調達レートの目線となります。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、財務省が株主の官製金融機関です。
特徴
民間金融機関だと勝てない金利水準での無担保、無保証で低利融資です。
支店数が少ないです。
民業圧迫のために派手な広告を展開しないです。
法人の場合は、連帯保証無しが基本です。
第三者の同席は断られる
税理士、公認会計士、融資ブローカー等を利用された方は、ご存知だと思いますが日本政策金融公庫の面談時にこれらの方が同席されます。
近年では、日本政策金融公庫が債務者以外の、いわゆる金融ブローカーと思しき人物の同席を断っています。
管轄支店は選べない
以前は、日本政策金融機関に融資残高がなかったら自由に支店を選べていました。
これにより支店間で審査の緩い支店に申し込むことも可能でした。
最近では、本店所在地によってココの支店と管轄が決められています。
両方とも申し込む
融資審査は、通る保証もないですし、減額解答もありえます。
ですので、民間銀行と日本政策金融公庫の融資を双方とも申込することが重要です。
ベンチャーキャピタルからの資金調達
創業段階からベンチャーキャピタル(VC)やコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)からの資金調達は考えない方がいいです。
出資条件
ベンチャーキャピタルからの資金調達は、株式の過半数(51%超)を求められることが多いです。
事業計画通りにIPOできなかった場合の株の買取算式は、増資受入れ前に決められた契約内容のとおりになります。
申込から着金まで
申込から着金までは、6ヵ月ほどかかるイメージです。
ベンチャーキャピタルの種類
銀行系ベンチャーキャピタル
銀行とすでに融資取引がある場合は、その銀行からの紹介で銀行系のベンチャーキャピタルが出資することが多いです。
証券系ベンチャーキャピタル
ホームページから問い合わせしたら話を聞いてもらえることが多いです。
独立系ベンチャーキャピタル
ホームページから問い合わせしたら話を聞いてもらえることが多いです。
ベンチャーキャピタルの注意点
基本的には、金融業と不動産業への出資は断られます。
ベンチャーキャピタルは、そのファンドの投資目線があります。
IRRでいいますと、30%~50%がイメージになります。
ベンチャーデッドからの資金調達
最近では、ベンチャーキャピタルからのリターン目線が高くなっておりベンチャーキャピタルがデッド目線で商売をしています。
それがベンチャーデッドです。
融資条件
財務状況
債務超過でもOKです。
担保物
担保が必要。なにが担保にできるかは、そのベンチャーデッド次第です。
担保候補は、売掛金、在庫、不動産等です。
不動産は担保評価の仕方で担保価値が大幅にブレる傾向にあります。
打ち合わせ
毎月試算表を提出してミーティングがある。
金利水準
融資事務手数料1%~です。契約書の弁護士へのレビューという名目で求められます。
金利は、5%~10%の範囲になります。
ノンバンクから資金調達
金融機関は、知らないノンバンクや個人的にお金を借りている人への融資を敬遠します。
金融の世界は、金利の高いところから借りだすと金利の低いところが撤退するです。
資金調達は、金融機関からのみにした方が無難です。
融資に強い税理士の存在意義
資金調達の強さをうたう税理士、公認会計士といった士業は多いです。
では、なにをもってその強さを計測すべきでしょうか。
それは下記にまとめられると考えられます。
金融機関とのコミュニケーション
税理士、公認会計士が融資審査の面談に同席したところで審査の内容がかわることはありえないです。
士業が作成する資料の精度は、融資審査に影響を及ぼします。
具体的には、試算表、部門別損益計算書、在庫一覧表、資金繰り表、借入明細一覧表の見やすさや精度です。
資料の提出は、タイムリーな資料を提出できるか。
銀行の担当者になぜ、今赤字なのか、黒字への解消方法、突発的な費用の説明ができるか等です。
会計処理
会計基準を検討して赤字にでも黒字にでもできます。
何も考えていない先生は、とりあえず早く仕事を終わらせようとするものです。
銀行は支店によって融資審査が異なる
銀行は支店長次第で融資審査が異なってきます。
私の経験上、審査の緩い支店長の次は、審査の厳しい支店長になるようです。
どこの銀行は審査が緩いかという情報は、その税理士の強みといえます。
銀行によって取り扱い商品が違う
銀行の融資は、上記の信用保証協会の保証商品と同様に各金融機関によって取り扱っている商品が異なります。
特に、民間(オリックス、オリコ、セゾンファンデックス、アサックス等)の信用保証が付される融資は取り扱いの有無に差がでてきます。
この情報を知っているか、知らないかは、その税理士の強みといえます。
融資サポートが必要なとき
下記のような場合は、融資サポートをうけた方がいい事例です。
①1億円を超えるような融資ロットや本部、役員、トップ決裁というような支店決裁よりも上位の決裁区分が必要な融資
②資本性ローン等の通常の融資よりも審査の厳しい融資
このような融資に直面する会社は、ある程度優秀な税理士、公認会計士にすでにチェンジしている場合が多いです。
年商規模の小さな会社向けの資金繰り対策
追加融資のタイミング
決算申告後に年次資金をまとめて借りておきます。
返済した融資を折り返しで融資するイメージです。
早め多めに借りる
融資の基本は、早め、多めです。
時すでに遅しの状況に追い込まれるとどうしようもないです。
必要資料リスト
融資内容は、どうでもよく、とりあえず借りたいという方は下記の資料で融資はうけられます。
決算申告書の製本
融資の返済スケジュール表
プロパー融資の借り方
結論は、あいみつとることです。
事業者の中には、銀行に相見積もりなんてという人がいます。
ですが、よくよく考えれば融資を受けて利息を支払っています。
ですので、融資は保険と同じ金融商品を買っているというイメージを持つことが大切です。
事前準備
手許資金を厚くしておくです。
手許資金を厚くしておけば、融資実行後すぐにリスケジュール(返済条件の見直し)になることはないです。
手元資金が薄い会社は、財務内容がよくても銀行の担当者からすればプロパーで融資をしたくないものです。
タイミング
プロパー融資の基本は、資金使途なしの運転資金からスタートします。
これは融資条件の交渉で、こちらが有利にたつためです。
必要のない資金なんだから借りても借りなくてもいいわけです。
そこでプロパー融資なら借りる!と言うか、協会付きは繰上弁済したい、プロパーなら借り換えに応じる、でお仕舞です。
融資上限額
プロパー融資で資金使途がない融資は、支店決裁の範囲となります。
地方銀行ですと5,000万円です。
信用金庫、信用組合ですと500万円です。
当然に事業規模によっては、上記のバーよりも下回ってしまいます。
帝国データバンク50点以上
帝国データバンクの評点が50点以上は、プロパー融資が当たり前になります。
プロパー融資は、銀行も上限があります。
上限に達したら他の銀行を利用していくものです。
究極の融資条件
全ての融資がプロパー融資になったら、次は金利勝負になっていきます。
金利も限界まで下げると下がらないものです。
そこで次は、代表者保証無しの融資条件となります。
融資コンサルティング報酬と貸金業法
よく税理士、公認会計士、元銀行員は、融資コンサルティングサービスを提案します。
この融資コンサルティングサービスは貸金業法に違反しないのでしょか。
貸金業法の規制をうけるのは、融資の媒介になります。
ですので、融資コンサルティングサービスの内容は、事業計画の作成や銀行の紹介といった内容です。
このような書類作成や銀行紹介のサービスに、融資額の3%~5%という手数料が多いです。
国会議員の逮捕
日本政策金融公庫への融資コンサルティングサービスをしすぎた遠山清彦元国会議員が有罪判決をうけています。
融資コンサルティングサービスは、法律違反になるようなサービスであることも覚えていた方が無難といえます。
粉飾決算
日本政策金融公庫の融資は、年商を基準に融資額の目線が決められます。
世の中の税理士、公認会計士は、融資事務手数料欲しさに売上を実態よりも多く見せかけた決算を組み、融資事務手数料を請求する方もいるようです。
当社の資金調達サービスの特徴
顧問料にインクルード
資金調達は顧問料に含まれています。一部除く。
スポットでの業務はうけておりません。
業務範囲
会計、税務、資金調達を一括サポート