100%増減資スキームは、既存株主の出資(資本)を利益剰余金に振り替えて、新たに出資(資本)を受け入れる処理をいいます。
100%増減資スキームを活用する事例
100%増減資スキームを検討する局面は、事業再生局面となります。
多額の損失を計上したことにより利益剰余金が▲の値、すなわち資本の欠損状態に陥ったときに、資本を減資して、欠損した利益剰余金を補填させます。
これは一種の株主責任の追及の手段として用いられます。
金融機関等のレンダーとしては、既存株主をキックアウト(押し出し)をしてスポンサーにその事業の出資者となってもらうときに活用していきます。
100%増減資スキームと99%増減資スキームの違いは、既存株主を残すか残さないかの差と考えてもらって差支えがないです。
ちなみに、同族会社においては、株主と代表者が同一という場合がほとんどです。
このときに借入金には、代表者の代表者保証(連帯保証)が付されていますが、株主としての地位がなくなったからといって自動的に連帯保証が消滅するわけではないです。
借入金に紐つく連帯保証を消滅させるには、繰上弁済し、当該債務を消滅させるしかないです。
会社法上の手続
減資手続きは、株主総会決議、債権者保護手続、個別催告、官報公告が必要となります。
この債権者保護手続きは、会社法449条に規定されていることから逃れることができません。
債権者保護手続きは、減資することを官報公告する1月以上前に債権者に通知することになります。
無償減資は、キックオフから3ヵ月で完了します。
費用は、司法書士報酬や登録免許税で計30万円位となります。
信用保証協会の利用を検討
保証協会は、中小企業の借入金に対して保証を付すことにより融資審査を通しやすくするものです。
ですので、減資後の増資には、この保証協会が利用できる範囲で増資することが賢明といえます。
一例としては、サービス業に対してスポンサーが1億円のエクイティをいれる場合は、5000万円を資本として、5000万円を劣後特約付社債といった感じです。
なぜ資本を5000万円にするかといいますとサービス業は5000万円をこえると保証協会が利用できなくなるからです。
税務上の注意点
税務上に関する注意点は、100%増減資スキームだと税務上の無償減資として取り扱われます。
無償減資は、法人税法上の資本金等の額は変動がないです。
ですが、住民税(都道府県および市町村)の均等割の計算では取り扱いがかわります。
無償減資は、平成27年の改正まで地方法人税の均等割の計算に影響を及ぼさなかったです。
ですが、この平成27年の税制改正によって無償減資も有償減資と同様に地方法人税の均等割の計算に影響を及ぼすこととなりました。
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