ソルトルック株式会社/塩見健二税理士事務所
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コーポレート 2024.05.23
  • 図解3分!親子会社の融資、連帯保証、資本取引、会計、税務

税理士塩見健二著

3829文字です。

概要

子会社が存在する場合の融資の実務について説明します。

会社が大きくなると、業法、業法上の免許、許可、事業エリア、人事などの理由で子会社を設立することが多いです。

子会社を作る理由

 

親子会社にするメリット・デメリット

メリット

会社を単体法人でなく、親子会社にするメリットは、優秀な人材のポストの確保にあります。

法人税においては、所得800万円までの軽減税率が適用されます。

 

デメリット

子会社を作れば作るほど管理が大変になります。

グループ全体では資金をもっていても会社間で資金が分散してしまいます。

 

親子会社による取締役の兼務

100%親子間の場合は、取締役を兼務していても特段、利益相反関係にならないです。

 

融資実行を取り扱う窓口支店

融資実行を取り扱う窓口となる支店は2パターンあります。

例として東京都に親会社、大阪府に子会社とします。

 

パターン1

東京親会社と融資取引がある銀行からの融資の場合は、親会社と取引のある支店が大阪子会社に対して融資をします。

この場合は、大阪子会社の支店登記を親会社の本店所在地にする必要があります。

 

パターン2

親会社と銀行において融資取引がない場合で、子会社の大阪にある銀行からの融資です。

この場合は子会社の最寄の支店が融資をしてくれます。

親子会社の融資引き受け先

融資審査の内容

金融機関の審査

融資審査は、融資実行をする債務者である子会社の与信をベースに行われます。

その後、グループを連結でみて子会社がこけても返済はできるのかと判断されます。

あくまで誰に貸すのかで融資の判断をします。

 

企業グループの業績は、よくても赤字子会社に貸出しをしてデフォルトすると処理が面倒なので個別で与信を判断するのでしょう。

ただ、親会社、子会社、兄弟会社の財務内容が悪かったらそちらが足を引っ張る場合があります。

信用保証協会の審査

親子会社の関係が次のような場合は、完全に保証協会の保証枠を別でみます。

①親子会社で別拠点で事業を営んでいること

 これは、東京親会社、大阪子会社のような感じです。

②親子会社間で売上、仕入といった損益取引がないこと

 親会社と子会社が全く依存していない売上形成ができている感じ(独立採算)です。

③親子会社間でお金の貸し借りがないこと

 お金の貸し借りがあると転貸資金とみられます。

※代表者は、親会社と子会社で同一人物でも問題ないです。

 

親子ローン

子会社の要資事情は、子会社の与信を計算して行われます。

子会社の与信が弱い場合には、子会社に対する融資であっても親会社への融資が検討されます。

これは、いわゆる親子ローン(転貸資金)と呼ばれるものです。

親子ローンとは、親会社への融資をし、そのまま子会社に貸し付けます。

このパターンの融資は、プロジェクトファイナンスや在外子会社への融資に利用される場合が多いです。

あと、銀行に海外の現地法人がない場合です。

 

親子ローンの財務上の注意点は、親会社の貸借対照表のスコアが悪化します。

これは資産、負債が両建てされることにより純資産比率が減少するためです。

 

最後に、親子ローンの場合は、連帯保証人が子会社の代表者のほかに親会社になります。

 

親子ローンの対応可能な金融機関の目線

民間金融機関は基本的に親子ローン(転貸資金)については、審査を通しずらいと認識しています。

その理由は、資金使途の不透明性にあります。

親子ローン(転貸資金)は、公的な金融機関だと話が前向きに進みやすい傾向にあります。

 

子会社への融資に対する連帯保証

親会社連帯保証の取り扱い

親会社が非上場会社

金融機関が直接に子会社へ融資する場合は、よくあります。

このときの融資には、親会社連帯保証が原則として求められます。

東京本社で大阪子会社の場合等の距離的に離れていても親会社の連帯保証は、書類のやり取りで済ませることができます。

 

親会社が上場会社

親会社が上場会社の場合は、非上場会社と異なり親会社の連帯保証が求められないようです。

ただ、子会社の財務内容が悪化した場合は、追加融資に親会社の連帯保証を求められる可能性はあります。

 

代表者保証の取り扱い

金融機関が直接に子会社へ融資する場合は、よくあります。

このときの融資には、原則として代表者保証が求められます。

この代表者保証は、銀行員の面前で自署押印する必要があります。

子会社の代表者は、通常ですと親会社の代表者になります。

そうなりますと、東京親会社で大阪子会社ですと代表者が自署押印するために大阪まで出向く必要がでてきます。

注意しないといけないのは、融資する金融機関の支店担当の面前で自署押印が必要になります。

金融機関の支店が、親会社、子会社の両方の最寄りにあったとしても融資する支店担当の面前で自署押印が必要です。

 

代表者保証だけのために長距離移動を避ける方法

代表者保証は、銀行員の面前で自署押印する必要があります。

東京親会社の大阪子会社で、大阪子会社への融資であっても同様の取り扱いになります。

そうなりますと、自署押印するだけのために東京から大阪へ出張する羽目になります。

この出張をさける方法は下記のとおりです。

 

代表者保証無しの融資

これは納税資金、賞与資金、季節資金等の完済まで6月以内の融資ならありえる話です。

条件は、金利が0.5%程上昇するぐらいです。

 

全国対応の金融機関を利用

全国対応の金融機関はメガバンクや一部の銀行となります。

こちらは東京の親会社の近くにある支店が、子会社に融資を実行するという手法です。

 

信用保証協会の保証枠の考え方

親子会社の信用保証協会の保証枠

親子会社で信用保証協会の管轄が異なる場合があります。

今回は、東京親会社、大阪子会社で説明します。

この場合の信用保証協会の管轄は、下記のとおりです。

東京親会社は、東京信用保証協会になります。

大阪子会社は、大阪信用保証協会になります。

 

このときに問題となるのは、保証枠です。

2社あるため、別々に保証枠をみるのか、それとも合算でみるかです。

答えは、合算でみます。

大阪子会社で保証協会付き融資を利用しすぎると、親会社で保証協会付き融資を満足に利用できない可能性があります。

 

親子間の資本取引

子会社を設立した当初は、金融機関からの融資支援を満足に受けることができないです。

そのため子会社の資本量をある程度厚めにした方がいいです。

子会社に数年分の決算書ができて、子会社にて金融機関から融資をうけれたら、子会社の有償減資をしてもいいです。

有償減資は、子会社の金融機関にとっては純資産額のマイナス行為です。

 

注意しないといけないのは、金融機関から融資を引き揚げたいと言われる可能性があります。

有償減資前に各金融機関にスタンスを確認した方がトラブル回避になります。

ですので、ヒアリングや資料の徴求があります。

 

親子間の配当取引

子会社は順調に事業運営をしているが、親会社が火の車という会社で説明します。

 

利益剰余金の配当

利益剰余金の配当

子会社が積み立てている内部留保を親会社に配当する方法です。

配当課税、源泉所得税および配当財源規制が注意点になります。

 

資本剰余金の配当

資本剰余金の配当

これは資本金、資本準備金、その他資本剰余金を有償減資すること方法です。

債権者保護手続きが注意点となります。

有償減資をする前に既存融資取引行に事前打ち合わせすることがポイントです。

 

混合配当

混合配当

上記の利益剰余金と資本剰余金を同時に配当する方法です。

親会社が、相当資金繰りに苦慮している場合に検討していきます。

 

親子間でのお金の貸し借りを消す方法

親会社と子会社でお金のやり取りがある会社は、多いです。

このような関係会社貸付金(関係会社借入金)は、金融機関の審査にマイナスの影響を及ぼします。

簡単に親子間のお金の貸し借りを消す方法は、下記のとおりです。

①金融機関に肩代わり融資をしてもらう。

 業績のいい会社だと、金融機関も話にのってくれます。

 

②真正DESを検討する。

 お金のやり取りなしで負債を資本に振替えます。

 債務超過でない限りは、ディスカウントされて資本になることはないです。

 発行株式数は、振替時の株価で変動していきます。

 

②疑似DESを検討する。

 お金のやり取りをして、負債から資本に振り替えます。

 

③減資を検討する。

 減資をしたお金で、貸付を消す方法です。

 

④合併を検討する。

 親子合併により債権債務の混同が生じて、お金の貸し借りがなくなります。

 

親会社からの信用保証に関する会計、税務上の問題

子会社が金融機関より融資をうけるときは、通常ですと親会社の連帯保証がつきます。

この親会社の連帯保証は、親会社が子会社に対して信用保証サービスをしたともみられます。

そのため親会社から子会社へお金のやり取りが必要でしょうか。

答えは、無償の役務の受入れを法人税法22条で益金として認識することを法定されていないからです。

ですので、会計上も親会社による信用保証を子会社に請求するか否かをどちらでもいいということになります。

 

諸法

子会社による親会社の株式の取得

会社法は、原則として子会社による親会社の株式の取得を禁止しています(会社法135①)

また、これに違反したときの罰則規定も置かれています(会社法976①十)。

 

親子会社における下請け法の適用

親子会社であっても下請け法を適用除外にする法的根拠はありません。

ですが、実質的に支配従属関係にある会社間の場合は、従前と同様の取引をしても差し支えないとしています。

 

 

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