税理士塩見健二著
コミットメントラインとは
コミットメントライン(英語:commitment line)とは、金融機関が一定期間、額までの融資を事業者に約束する契約です。
融資の申込から着金までは、最短3日と言われています。
コミットメントラインは、特定融資枠契約に関する法律が適用される金融サービスです。
この特定融資枠契約に関する法律は、契約当事者の事業者に下記の事業規模要件を満たすことを法定されています。
この事業規模要件の一部は、下記のとおりです。
①会社法上の大会社(会社法2⑥)(特定融資枠契約法2①)、資本金5億円 以上、負債200億円以上の会社ということです。
負債200億円の縛りは証券ファンドが該当します。
②資本金額が3億円を超える株式会社(特定融資枠契約法2②)
③純資産の額が10億円を超える株式会社(特定融資枠契約法2③)
④金融商品取引法によって監査証明を受けなければならない株式会社(特定融資枠契約法2④)
平たく言えば株式を上場させている会社のことです。
⑤上記の子会社(特定融資枠契約法2④)
このことからコミットメントラインは、中小企業では、限られた会社でしか利用できない金融サービスといえます。
コミットメントラインの類似金融サービス
コミットメントラインには、類似サービスがあります。
それは、コミットメントライン、アンコミットメントライン、クレジットラインです。
このサービスの違いは、下記の通りです。
コミットメントラインとは、上記で説明したとおり金融機関が一定の期間、額までを事業者に融資する義務を負わせます。
アンコミットメントラインとは、金融機関と契約をしますが、金融機関に融資する義務を負わせません。
クレジットラインとは、金融機関で一定の額まで融資可能という融資枠をきめることです。
当座貸越との違い
当座貸越は、上記のアンコミットメントラインのことです。
ですので、コミットメントラインとの大きな違いは、2点(事務手数料、金融機関への融資義務)です。
取扱いのある金融機関
コミットメントラインは、全ての銀行が取り扱いできる金融サービスではないです。
メガバンクや地方銀行で提供される金融サービスです。
信用金庫、信用組合には、提供がない金融サービスです。
アンコミットメントラインは、プレーンな金融サービスです。
アンコミットメントラインには、信用保証協会に根保証という保証サービスもあります。
コミットメントラインの利用方法
コミットメントラインは、タームローン(証書貸付)とセットで利用されるケースが多いです。
タームローンで手元資金を底上げして、コミットメントラインで季節、納税、賞与などの手許資金が少なくなるときに利用します。
コミットメントラインは、要資事情が生じたときに資金調達するのでリボルバーとも呼ばれたりします。
コミットメントラインのメリット・デメリット
コミットメントラインを活用するメリットは下記のとおりです。
①支払利息の圧縮による利益の確保
②ROAの向上による財務効果
コミットメントラインを活用するデメリットは、下記のとおりです。
①融資枠をはった瞬間のコスト
②契約期間だけ融資することが約束されているため契約期間外になると融資枠の取り崩し
コミットメントラインの手数料相場
コミラットメントラインは、契約によって融資枠の範囲で融資実行を確約します。
融資枠を設定した時点で事務手数料(アップフロントフィー)が生じます。
事務手数料の相場は、融資枠に対して1~2%+消費税です。
仮に、10億円の融資枠を1年間、2%で設定した場合は、2,000万円(=10億円×2.000%)です。
このうち6ヵ月間5億円を0.500%で借りた場合は、125万円(=5億円×0.500%×6ヵ月)です。
年間金融コストは、2,000万+125万円=2,125万円となります。
金融サービスは、毎事業年度同じタイミングで利用するものです。
トータルコストで安いか、高いかで判断すれば大丈夫です。
アップフロントフィーの会計処理
アップフロント契約は、融資枠の設定期間を自由に選べます。
3ヵ月毎、1年毎、3年毎みたいな感じです。
アップフロントフィーは、融資枠設定時に支払います。
この融資枠の設定期間に応じて会計処理をすれば大丈夫です。
原則は、決算日から1年以内に融資枠の設定期間が終わる場合だと前払費用になります。
これが1年を超えるようでしたら長期前払費用として会計処理をします。
アップフロントフィーの税務処理
消費税
アップフロントフィーは、消費税法上、金融サービスの事務に関する役務提供とみるため消費税課税取引となります。
法人税
法人税法上は、アップフロントフィーは等質等量の役務提供といえます。
等質等量は、法人税法上の考え方で同じ品質、同じ量の役務の提供という意味をしています。
事例としては、地代家賃です。
ですので短期前払費用として一括費用処理も可能です。
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