税理士塩見健二著
子会社への投資の回収(有償減資)をすることによる金融機関対応や税務といった実務を説明します。
有償減資を検討する局面
有償減資をする局面は大きくわけて2パターンです。
1つ目は、子会社において金融機関から融資支援がうけれるようになったために大きな出資額が必要なくなったときです。
2つ目は、親会社の資金繰りが悪化したために子会社への出資を回収して資金繰りを安定させたいときです。
有償減資の概要
有償減資は、資本金や資本剰余金といった株主資本を株主に配当することをいいます。
有償減資は、純資産額が減少するため金融機関、リース会社、割販会社にとってその債権がデフォルトする可能性を高める取引のため債権者保護手続きが法定されています。
債権者保護手続きの内容は、概ね2か月でできます。
官報等への公告および金融債権者への個別催告になります。
コストは、司法書士への報酬が30万円ぐらいとなります。
金融機関の対応
金融機関からの問い合わせ
金融機関へは個別催告がなされることを説明しました。
個別催告は、郵送でなされます。
郵送後は、金融機関の担当者から下記のような質問がなされます。
理由は、上司や本部に稟議をあげるみたいです。
一つ目は、なんで減資するの?
二つ目は、減資に伴う仕訳を教えてほしい。
資本取引は、金融機関の担当者になじみのない取引のようです。
金融機関の融資の引き上げ
債権者保護手続きは、金融債権者にお金を返して!といえる権利を付与するみたいなものです。
銀行からお金を返して!と言われて資金繰りが悪化することも考えられます。
ですので、有償減資をする前に事前にお伺いを立てておくことが重要です。
追加担保
有償減資は、債権者にとって不利なことでしかないです。
純資産額が少なくなるため当初融資したときの財務内容とかわってくるからです。
純資産額のマイナスによって、金融機関から追加で担保を求められる可能性もあります。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は有償減資した場合に、資料徴求が多いです。
債権者保護手続きで書面が支店に届いた後に担当者から代表者に連絡があります。
そのあとに、書面で必要書類リストが送付されます。
日本政策金融公庫が求める資料を提出しない場合は、債権者保護手続きで異議申し立てが行われる可能性があります。
ですので、必ず求められた資料は提出した方がいいです。
財務内容への影響
子会社
子会社の財務内容は、現金の社外流出と純資産額がマイナスとなります。
親会社
親会社の財務内容は、投資の回収になります。
ですので、現金の回収による手許現金の増加および子会社株式という固定資産の減少となります。
みなし配当
みなし配当
有償減資をする子会社に利益剰余金が溜まっている場合は、みなし配当(法法24)を検討する必要があります。
さらに、そのみなし配当をする会社が完全子会社の場合は、グループ法人税制の適用をうけます。
そのことから税務上で特殊な申告調整処理が必要となってきます。
みなし配当は、マニアックな論点なため税理士も見落としやすいです。
法定調書の作成
みなし配当は、有償減資した法人に対して法定調書の作成が必要となってきます。
源泉徴収義務
有償減資に伴い、みなし配当が生じた場合は、有償減資した法人に源泉徴収をして納付する必要があります。
資金繰り、財務、税務をオールインワンで解決!