企業再生型の資本性ローンを活用するときの実務上の注意点を説明します。
資本性ローンを活用できる財務内容
資本性ローンは、日本政策金融公庫より発売されている融資商品のひとつです。
その目的は、財務内容が悪化している会社に、公庫が積極的にリスクマネーを投入することによって民間金融機関からの金融支援をうけいれやすくする(真水融資)というものです。
ここにいう財務内容が悪化とは、どのような局面なのでしょうか。
一番わかりやすい例は、過去の投資の失敗により大幅な債務超過に陥ったが、現存している事業は好調で黒字が堅調であるです。
このような会社の債務超過を穴埋め資金として資本性ローンを活用し、資産超過にするというものです。
商品説明
はじめは、返済方法です。
資本性ローンは、長期融資にもかかわらず月々の約定弁済がなく、きめられた年限、5年、7年といった期限到来後に一括弁済するという返済方法で繰上弁済は認められません。
債務者さんが、気にされるのは、一括弁済する資金がなかったときです。実務では、約定弁済付の長期ローンに借換えをして資本性ローンを完済します。
次は、特約です。
資本性ローンの特徴は、劣後特約が付されています。この劣後特約とは、債務者さんにデフォルト等の金融事故が生じたときに、他の債権よりも弁済を後回しにするというものです。
倒産する会社の最後配当は、債権額の10%未満という場合がほとんどですので、そこに劣後特約をつけるとデフォルトしたら債権回収が困難だと理解できます。
最後は、金利です。
上述したとおり、資本性ローンは、大幅な債務超過の会社に対して、元本の約定弁済なし、そして劣後特約まで付してあるローンです。
ですので、金利も高めに設定されています。
金利の決め方は、決算後に財務資料を日本政策金融公庫に提出して金利が査定されます。
下記の売上高減価償却前利益率が高くなればなるほど、金利が増加する仕組みです。
利率は、債務者の利益水準に応じて変動します。
注意が必要なのは、故意に会計操作で利益を下げた場合は、日本政策金融公庫が利益を見直しすることです。
これは資本性ローンの契約書にも記載されています。
審査の内容
審査は、とても厳しいです。
申込から融資実行まで、面談や資料、ヒアリング等で3ヵ月位かかります。
本部決済となります。
必要資料は、決算書一式のほかに総勘定元帳も提出が必要となります。
最後に過去の審査の一例を紹介します。
過去にダブルファイナンスをしていて売上を吹かしてい債務者さんは、総勘定元帳の提出により、その会計処理が露見し、資本性ローンの審査に落ちていました。
買掛金や人件費を計上していなかった債務者さんは、審査に通っていました。