税理士塩見健二著
当座の枠張り(バックアップライン)の内容
当座の枠張りは、アンコミ、当座貸越(英語:bank overdrafts)といろんな言い方があります。
アンコミとは、アンコミットメントラインの略です。
当座貸越は、日本語です。
ここでは、以下アンコミという言い方で統一します。
アンコミは、金融機関が会社の財務内容などを勘案して3,000万円、5,000万円と一定の極度枠を作ります。
アンコミは、金融機関に決算書が提出された段階で与信審査をあらかじめしておきます。
その後に債務者がお金を必要とするときに、金融機関は、軽い審査で融資審査だけをして融資実行になります。
極度枠の使い方としては、季節要因で売上が一時的に下がって手許資金が薄くなるタイミングでワンタッチというような使い方です。
ですので経常的でベタッと融資が寝るような使い方に馴染まないといえます。
根保証の利用
銀行の当座貸越は、一定以上の財務内容や担保といった信用が必要です。
この信用が銀行の基準を満たさない会社であっても信用保証協会の保証に枠を設定できます。
いわゆる根保証というサービスです。
当座貸越の使い方
パターン1
当座貸越は常にお金が必要でない会社で利用します。
産業でいいますと、売上の増減に季節性がある商売です。
銀行員は、短期の運転資金融資のことをタンコロと呼称したりします。
例えば、ウェディング事業ですと3月~5月は売上が伸びますが、8月がまったくダメです。
8月に売上がないために現金は、急激に減少します。
この一瞬だけの手許資金を増やしたい目的で当座貸越を利用します。
パターン2
建築業者は建築現場ごと、不動産業者は、商品不動産の仕入ごとに融資を組みます。
銀行員は、プロジェクト資金と呼称します。
プロジェクトごとに融資をします。
あまりにも建築現場が多い場合や商品不動産が多い場合は、当座の極度枠を設定してその範囲で運転資金として融資します。
パターン3
長期の融資は、利息の支払いが固定費となります。
なるべく、短期の要資事情が出現したときにだけ資金調達をしようと考える会社もあります。
このような意味で利払いを圧縮して利益を残したい会社が利用します。
パターン4
そもそも会社に多額の手許資金がある会社にあるパターンです。
この手の会社が当座貸越で融資を利用するのは、金融機関との付き合いに限ります。
よくあるのは、金融機関の中間決算(9月)と本決算(3月)のタイミングで短期融資をうけるパターンです。
更改の仕方
更改は、民法513条に規定されています。
この民法513条とは、既存の債権の要素を変更する契約を締結することにより、当該債権が消滅すると同時に、これに代わる新しい債権が成立すること。とされています。
要するに、金融機関の融資するという義務は、更改によって融資額が増減するということです。
アンコミの更改は、決算などのタイミングでアンコミの極度枠を増減させます。
業績がよければ問題ないですが、赤字になったりBSが重たくなったり、純資産が薄くなると極度枠を減額される恐れがあります。
当座貸越の審査
当座貸越の審査は、厳しいです。
下記が目線となります。
①純資産価額が大きい
②直近の決算書が黒字
③5年以上の業歴
④不動産等の担保を差し入れている
⑤定期預金等で預金担保を設定している
当座貸越の注意点(デメリット)
アンコミは、融資の極度枠をはるだけであって融資を絶対にするという約束を金融機関と締結していないです。
ということは、資金繰りにアンコミの枠を当てにしているとベタ貸しという痛い目にあうことが考えられます。
逆に、絶対に極度枠の範囲で融資するという金融手法もあります。
これはコミットメントラインというものです。
あとアンコミは、月々の約定弁済がなないため借金漬けになりやすいです。
借金の返済に追われている会社の場合は、本来の使い方を逸脱して枠目一杯借りています。
計画的な利用が求められます。
最後に、資金使途を厳格にする金融機関の場合は、アンコミでの融資を割賦付に切り替えて欲しい、一旦完済して欲しいといってきます。
その理由は、過剰債務の会社でアンコミの枠をはっている会社だと必ずといっていいほど極度枠までパンパンに借りられているからです。
当座貸越契約と印紙
当座貸越契約へ貼る印紙は、200円となっています。
国税庁のホームページでは、極度貸付契約証書で紹介されています。
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