建築業特有の融資について説明します。文字数は、約4,846です。
建築業特有の資金繰り
建築業は、工事代金の支払いに遅行して入金することが往々にあります。
工事代金の入金のタイミングは、下記が多いです。
・引き渡し完了後
・工事受注時に前金、工事完成後に残代金
・頭3、中間3、残金4
・頭10、中間10、残金80(テンテンパーと言ったりします。)
これは建築主との交渉で入金のタイミングがかわってきます。
建築主は、銀行からなるべく支払いは遅くするように言われます。
建築会社は、工事代金の入金が後になる工事ほど、工事代金の支出が先行し資金繰りが厳しくなります。
どのようにすれば、資金繰りが厳しくならなくて済むのでしょうか。
日本政策金融公庫からの融資で手元資金のボトムアップ
建築業者の手許資金の増やし方は、運転資金の融資をうけることに限ります。
ずばり審査が緩いのは、日本政策金融公庫の一般貸付や特別貸付になります。
特別貸付とは、創業、事業承継、コロナ等の特別な事情による貸付です。
日本政策金融公庫の融資条件を説明します。
日本政策金融公庫は、財務省が株主の特殊法人です。
ですので、貸出金の原資は税金となります。
だから、融資審査が緩いのです。
日本政策金融公庫の融資の特徴は下記のとおりです。
融資量の目線は、年6ヵ月を目途に提案がなされます。
支店決済での上限は4,800万円でこのバーまでだと審査が緩いといえます。
返済期間も通常の運転資金ですと7年弁済(※1年以内等の短期資金は取り扱っていない)です。
融資審査の特徴としては、過去6ヵ月分の通帳の原本を提出する必要があります。
過去に家賃や携帯電話の滞納がありブラックリストに載っていたとしても完済していれば融資審査への影響は軽微といえます。
日本政策金融公庫の審査は、対応する人によって審査の難易度がかわってきます。
これは審査が人の思考が介入する以上しかたないです。
銀行からの保証協会付きの融資で手元資金のボトムアップ
信用保証協会の保証協会付きの民間金融機関からの融資です。
民間の金融機関の融資に信用保証協会が信用保証をするという仕組みです。
これにより金融機関の融資が焦げ付いたとしても信用保証協会が融資の完済を保証してくれるため金融機関が安心して融資実行をしてくれます。
民間金融機関は融資残高を伸ばしたいものです。
ですので、資金使途がない運転資金であったとして保証協会付なら積極的に融資支援の提案をします。
信用保証協会の保証は、上記の日本政策金融公庫よりも厳しい審査になります。
信用保証協会の保証の特徴は、その地域の行政が保証商品を開発します。
この産業に金融支援が必要だ、という政策目標があります。
ですので、地域ごとに保証商品、保証条件等のラインナップが異なってきます。
最後に、信用保証協会も日本政策金融公庫と同様に人が審査をします。
どうしても審査に厳しい、緩いがでてきます。
ですので、決算期ごと等で審査にチャレンジしていくことが大切になります。
東京サポートプラス融資(オリックス)で手元資金のボトムアップ
東京サポートプラス融資(オリックス)は、東京都、オリックス、民間金融機関の3社で提供されている融資になります。
融資上限額は、3,000万円となっています。
利用できる銀行、信用金庫は限定されています。
ですので、その金融機関と取引していないと利用できないサービスになります。
この商品の注意点は、利用しようとする金融機関とすでに12ヵ月以上の融資取引があることです。
この融資枠の注意点は、下記の東京サポートプラス融資(全国しんくみ)を利用していると利用できなくなります。
東京サポートプラス融資(全国しんくみ)で手元資金のボトムアップ
東京サポートプラス融資(全国しんくみ)は、東京都、全国しんくみ(再保証:オリコ)、民間金融機関の3社で提供されている融資になります。
融資上限額は、3,000万円となっています。
利用できる信用組合は限定されています。
ですので、その信用組合と取引していないと利用できないサービスになります。
この商品の注意点は、利用しようとする金融機関とすでに12ヵ月以上の融資取引があることです。
この融資枠の注意点は、下記の東京サポートプラス融資(オリックス)を利用していると利用できなくなります。
オリックス保証付き融資で手元資金のボトムアップ
このオリックス保証付融資を利用できる金融機関が限定されています。
保証枠は、オリックスと金融機関との取り決めにより2,500万円であったり、5,000万円であったり異なってきます。
保証枠の他にも保証料なども個々の金融機関によってかわってきます。
オリックス保証は、その利用しようとする金融機関と初回取引から利用できます。
オリコ保証付融資で手元資金のボトムアップ
大東京信用組合の独自融資に、大信ビジネスローンがあります。
大東京信用組合は、東京都内で広い支店網を有しているため比較的にこのローンを利用できる事業者も多いです。
オリコが保証している商品になります。
こちらの融資条件は、上限1,000万円、固定金利、5年となります。
支出先行の工事のための3種類の融資サービス
手形貸付
支出が先行して入金があとになる工事は、材料費、人件費、その他の雑費について銀行の融資対象となります。
そこで建築業者は、銀行に対して工事契約書を銀行に提出して、工事の存在を証明して自社の振り出した手形を銀行に引き受けてもらい融資をしてもらいます。
この手形貸付の仕方は、3つあります。
銀行のプロパー(※プロパーとは無担保、第三者保証無しという意味)融資
信用保証協会の保証付きの手形融資
ノンバンク(アルトア等)の短期間のつなぎの手形融資
財務内容がしっかりしているところは、プロパーになります。
財務内容がプロパーの基準にのらないと保証協会付きになります。
当座貸越の極度枠
当座貸越の極度枠の設定です。
こちらは特段、手形を振り出さずに極度枠の範囲で何度も融資の実行、完済をすることができるものです。
銀行に当座貸越の極度枠を設定するには、ある程度の財務内容による信用や担保となる不動産や有価証券が必要になってきます。
当座貸越の極度枠を設定した場合は、決算書の提出後に極度枠の改定(見直し)が行われます。
極度枠は、赤字であったり、債務超過になるとお取り崩しになることもありえます。
当座貸越を利用した場合の融資の着金は、申込から2週間ですので非常にスピーディです。
信用保証協会の保証に根保証を設定
銀行に当座貸越の極度枠を設定するだけでなく、信用保証協会の根保証を設定することもできます。
こちらは銀行の当座貸越の極度枠の設定よりも審査が緩いです。
ですので、銀行の当座貸越の極度枠を設定できなかってもこちらの根保証の極度枠を設定してもいいとおもいます。
申込から着金までは、信用保証協会の保証審査と銀行の与信審査があるため銀行の当座貸越融資よりも着金が遅くなり、3週間も見ておけば大丈夫です。
freee(フリー)を利用して資金調達
全自動で会計業務をしてくれるfreeeが人気です。
このfreeeを利用している事業者向きのサービスとして資金調達もあります。
freeeは、ルーチンな入出金に強いソフトです。
プロジェクト毎に入金や出金が異なる建築業の場合は、freeeを利用することが不向きになる可能性があります。
不動産担保融資
上記に解説させていただきました当座貸越の極度枠の設定のために自宅や工場等の不動産を担保する場合があります。
この不動産担保による融資のポイントは、なるべく一番抵当権者の融資枠を大きくすることに限ります。
そこで一番抵当権者の融資枠を大きくする借換方法を2パターン説明します。
他行借換
不動産の評価額は、各金融機関によって異なりますが下記の順位で不動産の担保評価が伸びていきます。
担保評価が伸びていく順番で、メガバンク、地方銀行、信用金庫、信用組合です。
ですので、不動産担保融資は信用組合に抵当権を設定することがポイントになってきます。
これは各金融機関グループで担保評価が異なるからです。
メガバンクは、いわゆる積算評価という辛目の評価で担保物を評価します。
これに対して、信用組合は実勢取引価額で担保評価をしてきます。
東京都内ですと、この積算評価と実勢取引価額に大きな差額が生じています。
抵当権を複数設定している場合
この場合は、後順位抵当権者の担保評価について、先順位抵当権者の担保評価を厳しくみます。
具体的には、極度枠×120%を担保評価から控除していきます。
ですので、後順位抵当権者か先順位抵当権者に借り換えをして融資をまとめた方が担保評価が伸び結果して融資額が伸びていきます。
よくあるのが、2番抵当権設定者がノンバンクです。
ノンバンクからの提案は、1番抵当権設定者の融資を弊社で肩代わりさせてもらえましたら融資がまだだせます。といったものです。
注意しないといけないのは、2番抵当権(後順位抵当権)を設定するときです。
民法上は、特段に1番抵当権者の許諾の必要性を法定していないです。
ですが、実務ですと1番抵当権者の了承を得て2番抵当権の設定をします。
リース取引
リースは、車両、パソコン、コピー機等とさまざまなものが対象となります。
リースを利用することによって銀行融資の与信枠や保証枠を残しておくことが可能になります。
リースは、銀行融資よりも金利負担が大きいサービスになります。
リース取引の特徴は、繰上弁済しても、しなくてもリース会社に支払う総支払額が同じということです。
融資審査は会計で解決
建設業は、連鎖倒産や黒字倒産が多い業界です。
これは過小資本の割に大きな金額を扱い、かつ、掛け取引が多いためです。
この工事に関する融資手法は、いずれも契約書以外に、下記の資料が必要になります。
試算表、請負工事現況表、借入残高表です。
試算表は、足元の数字の確認です。
現状が赤字でも将来が黒字にできる説明ができればOKです。
できれば融資申込の前月までのデータがあることがベストです。
請負工事現況表は、決算着地や今後見込まれる粗利益がわかります。
この資料は、末尾の金額と試算表の数字が合致していないとマズイです。
建築業者が作成するこの資料は、ほぼ100%合致していない書類を銀行に提出しています。
借入残高表は、同業の金融機関の貸し出し条件や融資姿勢を確認するための資料です。
貸出条件は、主にプロパーなのか信用保証付なのかや融資残高を減らしていないかとかです。
融資残高が明らかに減少している銀行があれば、自行の知らない情報をもっているのでは?と勘繰ります。
借入残高表も試算表の数字と合致しているものを提出します。
銀行融資は、上記の日本政策金融公庫や信用保証協会付き融資ですと会計資料を提出すれば何とかなるパターンが多いです。
そのためタイムリーな資料を対金融機関用で作成するのは一手といえます。
建築業者の事業承継融資の内容
親方が高齢のために、スタッフが事業を引き継ぐことになったという事例はよく聞きます。
このときに親方へは、事業会社の株、工場設備、不動産、材料、親方の退職金見合いで事業承継(M&A)が行われます。
この事業承継(M&A)資金も日本政策金融公庫と信用保証協会の保証で用意されています。
日本政策金融公庫は、事業承継・集約・活性化支援資金が用意されています。
この融資は、事業承継がされることに対する資金を融通します。
融資内容は、最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。
返済期間も最長設備20年、運転7年となっています。
このような政策目的でもある融資は、通常の融資審査よりも緩い傾向にあります。
東京信用保証協会の保証は、事業承継サポート保証を用意しています。
こちらは、会社の株式の買収が資金使途となっています。
こちらも政策目的での保証ですので、通常の保証審査よりも緩い傾向にあります。
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