税理士塩見健二著
信用保証協会の保証の概要
信用保証協会の保証は、銀行の融資債権がデフォルトしたときに、保証協会がその損失を保証にて穴埋めしてくれる(代位弁済)というものです。
代位弁済後の債権者は、銀行ではなく保証協会が新たな債権者となるわけです。
債務者にとっては、債務の弁済額に変動が生じるわけではないです。
銀行からするとプロパー債だと弁済が限りなく0円ですが、保証付き債になると債権残高の80%ないし100%の弁済が見込まれます。
ただ、債権の保証を保証協会が行うのは、下記➁に記載する保証の免責事由にあたらないことが前提となります。
ですので、銀行としては保証免責に該当したら債権の回収が困難ならしめることとなります。
信用保証料の計算
信用保証協会の保証料は、算式が公表されておりシミュレーションもできます。
よく誤解されることは、銀行融資で金利だけがコストに係ると考えられる方が多いです。
保証協会付き融資の場合は、金利の他に信用保証料がかかってきます。
この信用保証料は、下記の要素によって負担額がかわってきます。
保証商品の種類は、いまですとコロナ保証、ウクライナ・原油保証等ですと保証料の補給などがあります。
市区町村がしている制度融資も保証料を補給してくれたりもします。
債務者の財務内容は、その債務者の財務内容によってランク付けされていき信用保証料が増減するという仕組みです。
保証期間は、24ヵ月以下の信用保証期間だと割高になるというものです。
保証の免責事由を説明
保証協会の保証免責事由は、デフォルトした金融機関の融資債権について保証しないことをいい、主に下記のイ、ロ、ハです。
旧債振替
これは債務者の調子が悪くなって既往債務のプロパー債がデフォルトしそうなときに、保証協会付きの新発の融資にて、プロパー債の弁済を行うものです。
銀行の融資判断ミスによる損失を保証協会へ擦り付けた格好になります。
有価証券の取得
投資目的の有価証券の取得は、金融商品取引法第44条の2第2項第1号に規定する「金銭の貸付けその他信用の供与をすることを条件として有価証券の売買の受託等をする行為」に該当し、禁止されています。
信用保証協会は、銀行の法令違反に対してその手助けをする行為をしません。ということです。
資金使途違反
融資は、資金使途(資金の利用目的)があってはじめて融資実行がなされます。
設備を導入したいための設備資金、賞与や納税の支払いにあてるための運転資金です。
この資金使途どおりに融資金が利用されないと資金使途違反になります。
具体例として、真実は、赤字補填のための運転資金ですが、それを設備購入のための資金に利用したいと虚偽の話をして融資金を引き出す行為です。
この手の相談は、よくうけます。
債務者から「銀行から設備の支払いの領収書をだせ。と言われている。どうしよう…」と言った感じです。
弊社の助言は、「もう運転資金は必要なくなったので繰上弁済します」といって繰上弁済を促します。
保証免責を未然に防ぐための銀行の行動を説明
上記で触れたように、銀行は保証協会付きの債権がデフォルトしても債権回収が図れます。
ただ、それが保証の免責事由に該当するとあてにしていた債権回収ができなくなります。
ですので、銀行としては何としても保証の免責事由に該当させたくないです。
では、保証の免責事由に該当しないために、銀行はどういう手法を採用しているのでしょうか。
旧債振替については、自行の問題なのでほっておきましょう。
資金使途違反(有価証券の取得を含む)は、債務者の意図が介在します。
なので、ここは銀行からすれば対策がとれます。
融資金が資金使途通りに利用されているかは、その支払いを自行の口座で行わせるのが手です。
誰に、いくら、何の目的(※給与、経費、納税の支払い、設備の購入代金)にて支払ったか一発でわかります。
実務ですと、銀行がリスケしそうな会社に対する保証協会付き融資を実行するときは、新たに口座(通知預金口座)を作らせて、そこで仕入れ代金等を支払わせます。
設備資金の場合は、その設備の見積もり額が融資金と釣り合っているかもチェックされます。
これは融資した金を、あとで支払業者からキックバックさせて資金使途以外の運転資金に充当させないためです。
不動産投資、プロジェクト向けの信用保証
不動産賃貸業をはじめるときや不動産業者が商品不動産を仕入れるときにも信用保証協会の保証が利用できます。
このときの保証の仕方は、下記のとおりです。
①で金融機関と保証協会との間で保証承諾と優先充当(※劣後充当もありえます。)の約束をします。
これによって、金融機関は万が一のことがあって債権がデフォルトしたとしても不動産を売却せずとも保証協会から債権の回収ができます。
②金融機関が保証協会を利用するか、しないかは、債務者の財務内容や担保とする不動産が売れやすいか否かです。
③金融機関が抵当権設定権者となっています。
信用保証協会の有担保保証で気をつけないといけないのは、収益目的で不動産を保有するときです。
信用保証料は保証期間が長ければ長いほど保証料が増大します。
そのため保証期間が何十年となると大きな保証料を請求されることになります。
信用保証料は、融資実行時に全額支払いますが、保証料が多きすぎる場合だと分割支払いもできます。
余談ですが韓国系の金融機関は、基本的に信用保証協会を利用しないです。
信用保証協会の有担保保証枠が利用できる不動産
信用保証協会の有担保保証枠は、どんな不動産であっても利用できるわけではないです。
担保として差し入れれる不動産は、信用保証協会からおおむね100キロ圏内の不動産とされています。
ですので、東京信用保証協会の保証を利用して沖縄県のリゾート不動産を買えないということです。
換価性もみられるため原野等も担保として差し入れることはできないです。
信用保証協会による債権回収
信用保証協会は、債務者の財務内容が悪化すると団体生命保険(団信)への加入を勧めてきます。
信用保証協会付き融資に対する団体生命保険の特徴は、融資実行時にしか加入することができない点にあります。
民間の生命保険会社は、債務超過の会社だと生命保険への加入を断る傾向にあります。
ですので、信用保証協会の団信に加入してもいいとおもいます。
金融機関が債権回収に走った場合は、保証協会付き融資の場合だと代位弁済となります。
代位弁済になると、債権が求償権という別の権利になります。
そして返済の相手方は、信用保証協会が運営するサービサーへかわります。
信用保証協会付き融資のメリット・デメリット
メリット
信用保証協会の保証が融資に付されるため金融機関の融資審査が緩くなります。
融資量は、プロパー融資よりも伸びる傾向にあります。
デメリット
金利の他に、信用保証料がかかるためトータルの資金調達コストがプロパー融資よりも高くなります。
信用保証協会の保証枠ばかり利用していると、いざとなったときに追加融資の支援がうけられない。
信用保証協会付き融資で断られる場合
保証協会から保証を断られる場合で多い理由は下記のとおりです。
①保証枠上限まで目一杯利用している。
②財務内容が悪い。
③前回の保証利用から3ヵ月もたっていない。
④同じ決算期で前回0円回答だった。
仮に信用保証協会の保証審査で断られたといって、いわゆるオリックス、オリコ、セゾン、アサックスといった民間保証も断られるとは限らないです。
信用保証協会付き融資(保証)審査の流れ
信用保証協会付き融資は、下記のフローで審査がされます。
申込から着金までは、初回で1.5ヵ月、すでに取引がある場合で1ヵ月が目安となります。
協会優先充当、劣後充当の使い方
信用保証協会の有担保枠の使い方は、大きくわけて優先充当と劣後充当があります。
ほとんどが優先充当になります。
優先充当
優先充当とは、債権がデフォルトしたときに信用保証協会が優先して担保物を換価したときの債権を回収できます。
おもに下記のような場合に利用します。
①不動産の取得資金
これは、不動産の担保価値で民間金融機関だと評価が伸びないが信用保証協会の担保評価だと評価が伸びて保証額が伸びる場合に利用します。
②財務内容が悪い会社
財務内容が悪い会社へは、金融機関の対応として不動産の担保よりも信用保証協会の保証を優先します。
保証協会の保証は、確実に債権回収できますが、不動産の担保は換価してみないといくら回収できるか不明だからです。
劣後充当
劣後充当は、極度枠よりも既往債務額が小さい場合に利用します。
このときに信用保証協会が極度枠を増加して欲しいと金融機関に注文をいれる場合は、極度枠の増額(極増)をしていきます。
おもに、不動産の大規模修繕資金に利用します。
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