税理士塩見健二著
2312文字
新事業を立ち上げるにあたって、会社関係、補助金、融資、会計、税務の視点で解説します。
新規事業に対する補助金
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、既存事業から新事業へ転換するために国庫が一部補助する制度です。
この制度の資金フローは下記のとおりです。
事業内容が採択された。
一旦は、自己資金ないしは金融機関やノンバンク等からのPOファイナンスで設備を完成させる。
POファイナンスとは、受発注書を担保とする新しい融資手法です。
設備が完成した後に、事業者へ補助金の入金があり融資を完済します。
事業転換補助金の種類
飲食事業者向き事業転換補助金
東京都ですと飲食店事業者向きに事業転換支援事業として補助金を公表しています。
一般的な補助金
法人、個人の本店にある各市区町村のホームページで補助金の募集がされています。
J-Net21というHPが補助金のポータルサイトで利用しやすいです。
新規事業に対する融資
民間金融機関
新規事業に対する民間金融機関の融資姿勢は、下記のとおりです。
コーポレートの財務内容が良好な場合
新規事業を対象とした融資であっても前向き検討です。
既存事業の利益で新事業がコケても返済できるだろうと金融機関は考えます。
こけた新事業に紐付く融資の回収は、下記のようになります。
①プロパー融資は、繰上弁済の可能性が高いです。
②信用保証協会付き融資は、繰上弁済になるか、ならないかは金融機関次第になります。
コーポレートの財務内容がよくない場合
よくないの例としては、手許資金が少ない、純資産額が薄い、資本欠損状態のことをいいます。
こうなりますと、新規事業を資金使途とした融資審査は厳しいといえます。
既存事業の追加設備投資の場合は、まだ机上にのります。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、政府系金融機関です。
国民生活事業、中小企業事業、農林水産事業に分かれており、それぞれ別枠です。
日本政策金融公庫は国策企業ですので、積極的に新規事業といったリスクある融資を検討してくれます。
国民生活事業
融資量は、支店決済で2000万円が上限になっています。
国民生活は、融資審査が緩く、低利での資金調達が可能です。
中小企業事業
年商規模が3億円以上の会社でないと取引が困難です。
融資量は、国民生活と異なり多種多様な融資商品が用意されています。
気を付けないといけないのは、許認可がいるような設備投資の場合は、許認可取得後に融資となります。
ですので、基本的にバックファイナンスと思っていただいて差し支えないです。
農林水産事業
国民生活事業および中小企業事業は、多くの会社で利用されています。
ですが、農林水産事業については、利用されていない会社が多いようです。
農林水産事業の概要を詳細に説明します。
飲食業者も融資支援対象となります。
農林水産事業について詳細に説明されているHPが見当たらないので説明いたします。
利用方法
利用方法は、下記のとおりです。
①農林水産に関わる製造、流通、加工に関わる事業であれば審査対象となります。
②資金使途は、設備資金のみです。
③融資をうけるには、行政(東京都等)の認定を受ける必要があります。
④新技術を用いた設備投資がいいです。
⑤融資額は、50万円~数億円です。
⑥上記にも説明しましたが、別枠です。
代表的な融資商品の種類
①食料品の輸出に関する資金
②水産加工場の整備資金
水産品の加工場、販売場、輸送トラックの取得資金等が該当します。
③産地から小売りまでの流通システム
上記②のような設備の取得資金が該当します。
④HACCP(ハサップ)導入に関する設備資金
食品衛生のための資金です。
⑤事業再編に必要な資金
株式の取得等の資金でいわゆるM&A資金です。
リンクはこちらです。
会社組織のポイント
新事業を既存会社と同じ会社で運営するか、それとも新会社で運営するかのポイントを説明します。
許認可の関係で会社をわける場合が多いです。
事業再構築補助金を活用する場合は、既存事業と同じ会社で新事業を行う必要があります。
既存会社で進める場合
メリット
①会社のバックオフィス業務に関するコストが安いです。会社が増えるだけ手間も増えます。
②年商規模が既存事業と新事業で合算されるため事業規模が大きくみえます。
デメリット
①事業ごとの損益状況がわかりずらいです。
②会社を売却(M&A)するときは、買主サイドからすると欲しい事業だけを買おうとします。
一つの会社にたくさんの事業があると、買い手としては、手をだしずらいです。
将来のリタイヤ時の会社売却を検討すると会社を事業ごとにわけた方がいいです。
事業をわける行為を会社分割といいますが、名義書き換えや税務処理が手間でしかないです。
新設会社で進める場合
メリット
①事業ごとの損益を明らかにできます。
②法人税の場合は、所得800万円までの軽減税率や800万円の交際費を会社毎に利用できます。
税務調査時は、費用の按分方法に合理的根拠があるのかヒアリングされます。
デメリット
①新規事業には融資が付きづらいです。
②既存事業を親会社、新事業を子会社とした場合は、子会社の融資に親会社の連帯保証を金融機関から求められます。
兄弟会社の場合は、この親会社の連帯保証を付さないのが一般的です。
③金融機関からの融資審査時にグループ会社すべての決算書等を求められます。膨大な資料になってしまいます。
融資審査期間は、複数の事業会社があるとその分遅くなってしまいます。
④新事業がこけたときに税務上の繰越欠損金を処理するのが大変です。
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