運転資金をわかりやすく解説すると
運転資金(英語:working capital)とは、わかりやすくというと預金通帳に入っている預金残高のことです。
この運転資金は、商流、年商の増加、決済のタイミング、納税によって恒常的ないし一時的にキャッシュが減少したりします。
商流、年商の増加、決済のタイミング、反復の具体例は、下記のとおりです。
商流
商流でわかりやすいのは、掛け取引、在庫を持つ事業です。
掛け取引は、売上代金の入金より先に材料費、人件費、経費を支払ったりするため手許資金が少なくなります。
在庫を持つ商売は、在庫を現金で購入すると、その在庫を販売するまで手許資金が少なくなります。
年商の増加
年商が増加することによって、上記の商流により生じる掛け取引、在庫の量が増加します。
年商の増加に伴って純資産額も増加していけばいいのですが、なかなか増資することはないです。
決済のタイミング
支出が先行して、後から入金するような場合があります。
その典型例は、補助金です。
補助金は、事業者が一旦、事業に要するモノを購入してから、補助金申請をします。
補助金の申請から6ヵ月後位に入金があります。
反復
反復は、納税、賞与、季節といった要因があげられます。
納税は、法人税を指します。
消費税は含まれないです。
法人税は、中間納税と本税の2回に分けて支払います。
この納税のタイミングだけ手許資金が減少します。
賞与、季節も支払い時だけ手許資金が減少します。
危険な運転資金の水域と対応方法
危険な状態
一般的に危険な手許資金量は、月商0.5ヵ月以下といわれています。
この手許資金量になると人件費や月末の支払いができないといった事業運営に支障がでてきます。
特に危険なのは、手許資金が少ない状態で、かつ赤字です。
こうなりますと、抜本的な解決をしないと事業破綻を起こしてしまします。
対応方法
金融機関は、最低限、決算書、直近試算表、借入残高表といった書類がないと融資審査をしてくれないです。
真っ先にこれらの書類を作成し、金融機関に駆け込むことが対応方法になります。
当座の資金を確保してから黒字経営に向けての経営改善活動になります。
仮に、金融機関から追加融資0円解答であった場合は、ノンバンクからの支援になります。
ノンバンクから融資をうけだすと金融機関からの今後の借入は、ノンバンクからの融資の完済がないまで絶望となります。
運転資金の計算方法と融資項目
上記において、運転資金の一時的なキャッシュの減少に対応するのが運転資金の融資になります。
運転資金の計算方法は、運転資金の資金使途によってかわってきます。
商流、年商の増加、減少といった理由による運転資金は、下記のとおりです。
経常運転資金
商流において売掛金、在庫を持つ会社向けの資金です。
計算式は、下記のとおりです。
増加運転資金
年商の増加に伴い固定費も増加します。
それに対応する資金で下記のような算式を用います。
その資金量の目安は、固定費3ヵ月分や月商2ヵ月分と言われています。
季節資金
商流において季節が原因で、売上高の増減が生じます。
売上高の減少に伴って現金の入金が少なくなり、手許資金が少なくなる場合もあります。
長期的にベターと融資を受け続けるのではなく、3ヵ月といった短期資金で資金繰りを回す会社に利用されます。
返済原資は、季節要因による売上になります。
融資を受けると金利を支払う必要があるため経費削減のための手法ともいえます。
金融機関も初回からプロパー取引だと、短期資金でスタートいうところもあります。
賞与資金
賞与を支払うタイミングで一時的に手許資金が少なくなる場合もあります。
長期的にベターと融資を受け続けるのではなく6ヵ月といった短期資金で資金繰りを回す会社に利用されます。
必要書類は、賞与台帳になります。
融資を受けると金利を支払う必要があるため経費削減のための手法ともいえます。
金融機関も初回からプロパー取引だと、短期資金でスタートいうところもあります。
採用教育資金
採用教育費は、将来の売上で回収するコストです。
一時的に採用媒体への出稿、教育期間の人件費がかかります。
必要書類は、採用媒体に関する請求書や人件費の明細になります。
融資期間は、6ヵ月ほどになります。
そのため資金使途として成立します。
納税資金
納税のタイミングで一時的に手許資金が少なくなる場合もあります。
長期的にベターと融資を受け続けるのではなく6ヵ月といった短期資金で資金繰りを回す会社に利用されます。
必要書類は、納付書です。
納税は、100円単位になります。
融資額は、キリのいい数字です。
端数は、自己資金での納税になります。
納税額は、36,543,500円の場合は、融資で36,000,000円、残り543,500円を自己資金といった感じです。
融資を受けると金利を支払う必要があるため経費削減のための手法ともいえます。
金融機関も初回からプロパー取引だと、短期資金でスタートいうところもあります。
つなぎ資金
つなぎ資金は、出金と入金のズレをカバーする資金です。
さきほどの補助金見合いのモノの仕入と入金のズレや在庫不動産の仕入と販売による資金の入出金のズレに対応します。
赤字補てん資金
赤字補てん資金は滅多に利用しないです。
赤字補てん資金は、最近でいいますと、いわゆるコロナ融資です。
その他としては、リストラ、早期退職金、事業撤退に利用する資金です。
理由は、どうやってお金を返していくのかというロジックを作るのが難しいからです。
運転資金の融資実務
融資は業績次第が答え
上記のように金融機関は、必要な融資量を計算しています。
ですが、融資実務においては、業績がよく、かつ手許資金が潤沢な先には、融資量のロジックを無視して融資がなされています。
結局は、返済が見込める先にお金が集まります。
逆に、計算上で融資が必要な先であったとしても過剰債務であったりしたら追加融資は望めないものです。
資金使途は作れてもダメなものはダメ
運転資金は、経常運転、増加運転、納税、賞与とさまざまなものがあります。
ですが、典型的に運転資金の融資がダメな業種である不動産業にいたっては、納税資金、賞与資金の融資申込をしても金融機関から断られます。
金融機関の中には、不動産業者への運転資金は、資金使途が作れても「ダメなものはダメだ!」としているところもあります。
融資の手法
上記において運転資金の資金使途を説明しました。
次に融資の手法を説明します。
融資手法は、手形、極度枠、証書貸付、社債に区別できます。
手形貸付
手形貸付は、主に短期資金で利用します。
短期資金には、季節資金、賞与資金、納税資金、つなぎ資金があります。
極度貸付(当座貸越)
極度貸付は、極度枠(クレジットライン)をつくり、その枠の範囲で反復的な短期資金で利用します。
極度貸付には、季節資金、賞与資金、納税資金、つなぎ資金で利用されることがおおいです。
極度貸付は、決算期毎に極度枠の更改(極度枠の増減)をします。
極度枠を設定することは、金融コストがかかるやり方(コミライン)とかからないやり方(アンコミライン)があります。
証書貸付
証書貸付は、主に長期資金で利用します。
長期資金には、経常運転資金、増加運転資金、赤字補てん資金があります。
社債
社債は、主に長期資金で利用します。
証書貸付と社債の違いは、債務者ないし社債の発行体の信用状態です。
私募債の方が信用状態が良好でないといけないです。
資金使途は、経常運転資金、増加運転資金となります。
私募債の方が証書貸付よりも資金調達コストが必要となります。
融資手法と印紙税
手形貸付、極度枠、証書貸付、社債の印紙税は下記のとおりです。
クラウドファンディングから資金調達する場合は、印紙税の節税のため書類にせず電子データにする場合があります。
印紙税だけを考えると社債による資金調達が得のように思えます。
ですが、社債は、社債発行費などの別のコストが生じますので一律に得とはいえないです。
ファクタリング
融資以外の資金調達としては、売掛金を現金化するファクタリングが存在します。
ファクタリングは、主に医療機関の売掛金の売買をしている業者が多いです。
ファクタリングは、貸金業等の規制をうけないため多種多様な業者が存在するため注意したいです。
注意しないといけない事例は、将来発生債権(※まだ発生していない債権)を譲渡して資金提供する業者です。
これは貸金業に該当する可能性があるため違反金融にあたる場合があります。
資金調達先の考え方
資金ニーズがある場合は、貸し手にアプローチしていかないといけないです。
一般的な貸し手候補としては、金融機関とノンバンクになります。
一般的な融資サービスは、メガバンク、地方銀行、信用金庫、信用組合、政府系金融機関で事足ります。
ノンバンクやファンド(※ファンド、クラウドファンディングも広義ではノンバンク)は、上記の金融機関が対応できない融資サービスを提供しています。
ノンバンクで代表なのは、担保融資です。
担保の見方の厳しさは、メガバンク→地方銀行→信用金庫→信用組合→ノンバンクのようなヒエラレルキーになっています。
これに連動して金利層も変わってきます。
担保には、不動産、売掛金、有価証券等があります。
金融機関でも不動産担保融資は、対応していますが癖がある不動産(底地、違反物件、持分等)は断られます。
このような癖がある不動産も担保にして融資するのがノンバンクです。
売掛金、在庫を担保とするABLは、金融機関だと基本的に対応が困難といわれます。
金融機関は、一般的に売掛金、在庫を担保とみず経常運転資金として融資をしていきます。
最近では、担保を必要とせず会計帳簿をノンバンクに提供することで与信判断をするサービスもあります。
とは、いっても債務者の業績が悪化すると通常は担保としてみれない担保物であっても金融機関は、担保として抑えにきます。
金融機関との付き合い方
金融機関のラインナップは、伝統的にメイン行、サブ行、政府系金融機関になります。
メイン行は、企業に対して大きな融資をし、蜜な連携をしている先です。
サブ行は、融資量が少ない、つなぎ資金だけといったその場しのぎの付き合い方をしている先です。
政府系金融機関は、メインになりえないが比較的にリスクの高い貸し出しをするため縁の下の力持ちの役割をしています。
投資実行時の運転資金
新たに店舗を作る、工場を作る、といった設備投資(プロジェクト)時は、設備資金だけでなく下記のような資金使途で運転資金も机上にのります。
設備投資による運転資金の項目は下記のとおりです。
諸経費の支払い
設備には該当しないような小物の購入資金等にあてはめます。
採用教育費の支払い
新たに店舗を作る、工場を作る場合には、人手の採用もいりますし、その教育にもお金がかかります。
売掛金見合い
売掛金が生じる商売の場合は、想定月商何か月の範囲で手許資金を増やす必要があります。
在庫見合い
新たに販売拠点、生産拠点を増やす場合は当然に在庫も増加しますので、その範囲で手許資金を増やす必要があります。
融資を受けるときの心得
融資の基本は、「早め、多め」に限ります。
早めというのは、融資審査に絶対がないです。
当然に0円解答もありえます。
だから、早めに申し込むことが重要になります。
多めというのは、長期融資の場合は元本据置でなく、約定弁済が伴います。
5,000万円を3年返済で借りた場合は、1.5年後に2,500万円が返済に充てられています。
それも考慮して多めに申し込んでおくということです。
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