税理士塩見健二著
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事業性資金の資金調達先は?どうやる?
返済が必要な事業性資金の資金調達先一覧
日本政策金融公庫の国民生活事業
日本政策金融公庫は、全国に支店があります。
どの支店になるかは、法人や個人事業主の住所地で判定されます。
融資の申込は、電話でも大丈夫ですし、インターネットからでもできます。
融資申込後、3営業日後に電話がかかってきて、面談日および必要書類がつけられます。
日本政策金融公庫は、株主が財務省である国策法人です。
融資条件は、民間金融機関よりも優良です。
民間金融機関
民間金融機関は、メガバンク、地方銀行、信用金庫、信用組合の信用保証協会付き融資になります。
信用保証協会は、融資に保証することで民間金融機関が融資をしやすくするサービスを提供しています。
スタートアップの法人や個人事業主ですと資金調達額が1,000万円を下回ることが大半です。
メガバンクは、最小融資ロット3,000万円が目線になりますし、地方銀行も最小融資ロット1,000万円が目線です。
ですので、1,000万円を下回る融資は、信用金庫や信用組合がオススメです。
融資の申込は、法人や個人事業主の住所地の最寄り支店に電話したら、「いついつに来店して!」といわれます。
民間金融機関の信用保証協会付き融資の初回申込は、申込から着金まで2ヵ月ほどかかります。
信用保証協会付き融資は、代表者の連帯保証を金融機関と信用保証協会の両方に付されます。
リース会社
リース物品の金額にもよりますが、スタートアップに対しては厳しい審査になる可能性はあります。
リースは、物件取得に利用できないです。
レジ、冷蔵庫、コピー機、パソコンといった動産のみがリースの対象となります。
ベンチャーデッド
ベンチャーデッドは、ノンバンクと考えてもらって大丈夫です。
基本的に何らかの担保が必要となります。
担保の種類は、不動産、有価証券、売掛金、在庫があります。
毎月試算表を提出したり、面談をしたり、します。
融資条件の目線は、1年、担保必要、金利8%
親族
親族から資金調達をすることもよくあります。
筆者としては、親族からの資金調達をオススメしないです。
事業が失敗したときに、親族間でお金を返す、返さない問題がでてしまい関係崩壊をしかねます。
返済が不要な事業性資金の資金調達先一覧
補助金
法人や個人事業主の住所地の各市区町村では、スタートアップ向けにホームページの作成に関する補助金等を用意
している場合があります。
補助金は、支払いが先行し、かつ、申込から入金まで6ヵ月ほどかかる場合があります。
自己資金
スタートアップで事業をするときは、サラリーマン時代に貯金していた自己資金も十分な資金調達手段になります。
金融機関は、スタートアップの法人や個人に有利な融資条件を提案してくれます。
スタートアップするときの自己資金の目線は、300万円です。
自己資金で賄える場合であっても融資を利用することをオススメします。
ベンチャーキャピタル
ベンチャーキャピタルからの出資は、事業実態があり、売上が見えてからの資金調達手段といえます。
申込から半年は、審査期間になります。
余談ですが、資金調達は、英語でfundingといいます。
スタートアップは、法人でするか、個人でするか
以前は、消費税法の免税期間の関係でスタートアップを個人ですべきという流れでした。
ですが、2023.10.1~消費税のインボイス制度がスタートします。
ですので、個人をスタートアップにする魅力が失せてきたようにおもえます。
資金調達の観点からは、法人を作ってスタートアップした方が下記の理由で得です。
①法人の事業開始を早くすることによって金融機関からの手厚い支援が受けられるようになる。
②日本政策金融公庫からの融資は、法人が債務者の場合、原則として代表者の連帯保証が不要です。
スタートアップが資金調達するときの注意点
口座の作成
事業性口座を作成するときは、金融機関に伺ってもすぐに作成してくれないです。
必要書類
事業性口座の作成に必要な書類の例は、下記のとおりです。
税務署等に提出した開業届の控
事務所や店舗を借りている場合は、その賃貸借契約書
資格証明書
通帳は、作成申込から出来上がりまで2週間が目線です。
ネット銀行は、すぐに開設できます。
面談
口座作成は金融機関の支店に伺います。
そのときに、なぜ口座が必要なのか、なぜ、併行なのかを聞かれます。
なぜ口座が必要なのかの解答例は、事業用決済口座、貯金用等です。
なぜ併行なのかの解答例は、個人口座を持っている、代表者の自宅や法人の本店と近いからです。
その他
金融機関によっては、口座作成時にいくらか預金をいれておいてくれないか、と条件を付されます。
日本政策金融公庫は、返済口座が用意されないです。
民間金融機関の口座から返済の引き落としがなされるため事業性口座を作成する必要があります。
レンタルオフィス
レンタルオフィスやバーチャルオフィスは、口座の作成や融資を断れる可能性が高いです。
申込から着金
スタートアップ企業は、決算書もないですし、事業実態もないです。
金融機関からは、リスクのある融資になります。
ですので、申込から着金までは、最短2ヵ月を見た方がいいです。
制度融資の場合は、3ヵ月ほど見た方がいいです。
制度融資は、法人や個人の住所地の市区町村がしている融資制度です。
インターネットで「市区町村名 制度融資」で検索できます。
制度融資は、金利が0%であったり、信用保証料が減免されたり、得です。
ですが、中小企業診断士の面談を受ける必要があるなど、手間のかかる資金調達方法です。
融資の減額
スタートアップ企業は、返済実績がないです。
自己資金の3倍が融資上限という目線もあります。
当然に、自己資金の3倍まで融資を敷ける根拠は何もないです。
ですので、スタートアップ企業の初期投資は、できるだけ少ない計画にした方がいいです。
据置期間
スタートアップ企業は、いざ事業を開始してもすぐに売上の入金があるわけではないです。
ですので、融資の実行から初回返済までの間に、3ヵ月以上の返済据置き期間を設けた方がいいです。
金融機関は、返済据え置き期間についてシビアにみます。
なぜ据置き必要なのかを商流を根拠に説明する必要があります。
リースの支払い遅延
リース取引には、返済猶予の交渉が通じないです。
リース料の支払いを遅延してしまうとリースに係るパソコン、プリンターをリース会社が持って帰ります。
代表者の事業経験
スタートアップの法人や個人への融資審査では、代表者の職務経歴が重要となります。
〇〇という業務を、数年間してきたのでこの度独立開業したというものです。
代表者の金融事故
スタートアップで事業を開始するときは、当然に代表者の金融事故の履歴が審査対象になります。
日本政策金融公庫では、CICとKSCから信用情報機関から信用情報を取り寄せています。
過去に携帯電話料金を滞納していたり、家賃を滞納していると、融資審査にマイナスの影響があると考えられます。
バックファイナンス
スタートアップ企業で自己資金に余裕がある場合は、一旦自己資金で決済して、その後に金融機関から融資で手許資金を
回復させる方法もあります。
このように融資が後追いになるファイナンス手法をバックファイナンスといいます。
バックファイナンスであっても、何にいくらつかったかという書類を用意しておいた方がいいです。
資金使途
融資で重要な考え方は資金使途です。
資金使途とは、なんでその融資が必要なのか、ということです。
自社ビル、店舗作成、車両購入、事業譲渡(M&A)といったものは、設備資金になります。
経常運転資金、増加運転資金、季節資金、賞与資金、納税資金、リストラ資金等が運転資金になります。
スタートアップ企業の資金調達の失敗事例
融資0円回答
融資0円回答はよくあります。
これは自己資金0円(=貯金0円)の法人や個人が融資を申し込んだが0円回答だった場合です。
この場合は、サラリーマンに逆戻です。
着金が間に合わず支払い遅延になった
物件取得や内装代金の支払いを融資を当てにする場合におこります。
事前に金融機関でいくらまで融資がいけそうか、確認することでこのリスクが減少できます。
資金調達コンサルタントの利用
スタートアップの企業向けに税理士や金融ブローカーが、資金調達額の〇%の報酬で財務コンサルタントをしています。
スタートアップ企業向けの審査に財務コンサルタントがいても審査に何ら影響はないといえます。
日本政策金融公庫では、融資希望者以外の面談への同席を原則として禁止しています。
融資を利用した場合のデメリット
事業をスタートして、順調に利益がでた場合は問題ないです。
ですが、売上不振で廃業した場合でも借金は残ります。
この借金は、代表者がサラリーマンに戻った場合であっても破産しない限りは返済する義務がのこります。
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