抵当権留保とは
プロジェクトファイナンスにせよ、運転資金の融資にせよ、金融機関は通常、担保物に抵当権を設定して債権の保全を図ります。
この抵当権の設定をしないことを抵当権留保といいます。
抵当権が留保されている不動産に抵当権を先に他社に設定される可能性があります。
ですので、抵当権を留保している金融機関にとっては、リスクの高い貸し出しになります。
抵当権留保は、いつでも債権者が抵当権を設定できる準備をしておく必要があります。
債務者から頂く印鑑証明書は3ヵ月おきに更新する必要があります。
どんなときに使うのか
抵当権留保ファイナンスの使い方は、大きく分けて2つあります。
一つ目は、財務内容が抜群の会社に対するファイナンスです。
抵当権を設定するときは、極度枠の設定額に0.4%の登録免許税が課されます。
1億円の極度枠をはった場合は、1億円の0.4%ですので40万円の登録免許税がかされます。
登録免許税以外にも抵当権設定に係る司法書士報酬もかかります。
抵当権を留保することによって、これらのコストがかからないです。
ですので、抵当権を設定しないことは、債務者にとって魅力あるファイナンスといえます。
二つ目は、抵当不動産の一番抵当権者にバレたくないときです。
二番抵当等の後順位抵当権の設定は、先順位抵当権者である一番抵当権者の同意を必要としないです。
ですが、実務ですと一番抵当権者の同意をとっています。
一番抵当権者は、二番、三番といった後順位抵当権をつけられることを嫌がります。
一番抵当権者が銀行の場合は、二番抵当権を付けられることをよく思いませんが、絶対に嫌だとはいいません。
ですが、一番抵当権者がノンバンクの場合は、後順位抵当権の設定を断固拒否します。
そのため、一番抵当権者にだまってファイナンスをしたいときに抵当権留保が利用されます。
抵当権留保にしても財務資料の開示で金融機関に指摘されます。
上記②の二つ目で一番抵当権者にだまってファイナンスしたいときに抵当権留保を利用すると説明しました。
債務者は、金融機関やノンバンクから試算表のほかに借入残高表を求められます。
金融機関やノンバンクが数字で着目するのは大きな数字の変動です。
運転資金が急激に増加し、それに伴い無担保、無保証で融資しているレンダーが登場した場合に抵当権留保ファイナンスが疑われます。
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