税理士塩見健二著
不動産の買取再販売のプロジェクトファイナンスでの協調融資の実務をについて説明していきます。
協調融資の手法
不動産の買取再販売の不動産担保ローンは、基本的に一行単独で行う場合がほとんどです。
ですが、たまに不動産の仕入価額が多きすぎると銀行が一行単独でリスクを負いきれないという理由により複数の銀行による協調融資や保証協会の保証を絡めるといった融資手法がとられます。
協調になる手法は、複数行の銀行による協調融資とシンジケートローンです。
協調融資は、各銀行が商品不動産に対して同順位の抵当権を不動産に設定する手法です。謄本の乙欄の順位番号に(あ)、(い)と登記されます。
シンジケートローンは、一行が不動産に抵当権を設定して、銀行間で利息のやり取りやデフォルトしたときのやり取りを契約で縛るやり方です。
シンジケートローンは、協調融資と違ってアレンジメントフィーという事務手数料が別途かかることから債務者としては不利な資金調達方法です。
私の経験では、メガバンクはやたらとシンジケートローンの提案をしてくる気がします。
保証協会と協調でする手法
金融機関の担保評価額と融資希望額に大きな乖離がある場合に、信用保証協会と金融機関の協調融資が検討されます。
担保割れしやすい不動産は、下記のとおりです。
10坪前後の狭小土地
エレベーター無しの建物で狭小地
担保評価は、下記の順番で厳しくなります。
信用組合→信用金庫→銀行
保証協会の金融機関の協調融資のイメージは、下記のとおりです。
上記の例だと、信用保証協会を利用することにより、金融機関のプロパー融資部分は、1.8億円から1.0億円に減少します。
保証協会との協調融資は、金利の他に別途保証料が生じることと保証協会の有担保枠2億円を食ってしまいます。
有担保保証についても一般枠の他に、セーフティネット枠(SN枠)や危機関連枠が存在します。
あと、買取再販売のプロジェクトで保証協会を積極的に利用する銀行は少ないです。
協調融資になる場合の注意点
協調融資の注意点は、レンダーの選定で債務者が選べない点と着金までの日数です。
レンダーの選定で債務者が選べない点とは、「弊社は、〇〇信用金庫と取引が綿密だから個々をパーティにいれて欲しい」といってもメインをはる銀行が綿密な取引をしていない場合は拒否されます。
パーティに入る銀行の特徴としては、業務提携をしている銀行や同じ地域にある銀行が多いです。
例えば、横浜銀行と東日本銀行、京葉銀行と武蔵野銀行、千葉興業銀行と千葉銀行といった感じです。
また、過去に銀行に一括繰上弁済を要求された、出入り禁止になったというような融資トラブルがあれば、その銀行はパーティに入らないので協調融資が困難になるケースもありえます。
着金までの日数は、一行単独での融資検討よりも複数の銀行が介在することから融資審査が長引く傾向にあります。
余裕をもってファイナンスを検証した方がいいです。
中小公庫を利用する場合
日本政策金融公庫(中小企業事業)は、レジデンス以外の不動産に対して長期、固定、低金利の融資提案をしてくれます。
ここは民間との協調融資を条件にしてくることが考えられます。